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落ち着いた色合いに変化し
古民家に馴染むウッドデッキ、ウッドフェンス
長野市の南東に位置する松代町は、北側に千曲川が流れ三方を山に囲まれた歴史的な街並みが残る真田十代十万石の城下町です。今回訪れた斉藤洋一さんのお宅は、明治初期に建てられた古民家で、地元で建設会社を営んでいる斉藤さんが10年ほど前に買い取り、リノベーションしながらお住まいになっています。2018年には、古民家の外装ともマッチするウッドフェンス、ウッドデッキを新設しました。3年の月日が経ち、どんな変化があったかを斉藤さんにお聞きしました。
建設業者こそ率先して国産材を利活用していきたい
縁側の役目も果たしているウッドデッキ
HUCOS 協同建設は、長野市周辺を中心に、主に木造住宅の新築、リノベーション、リフォームを行っている建設会社です。社長の斉藤さんは、2010年に後継者がいなくなってしまった古民家を購入し、翌年からリノベーションをしながら、ここでご家族と暮らしています。
ウッドフェンスとウッドデッキをつくったのは3年前。「隣の家との境界に塀をつくりたいとずっと思っていたんです。家の中のリノベーションも一段落したので、前から欲しいと思っていたウッドデッキと一緒につくることにしました」。
素材に木材を採用した理由をお伺いすると「今、林業も担い手が少ないなど苦しい状態が続いていますよね。我々、建設業者が率先して国産材を使っていくべきだと思っているんです。フェンスとデッキには、飫肥(おび)杉の赤身(心材)に、安全性の高い薬剤を加圧注入して防腐・防蟻処理したJAS性能区分でいうとK4に相当する木材を使っています。取引先の材木屋さんが、この材を薦めてくれたのですが、飫肥杉は精油分が多く外構に向いてる木材だと思います。もともと耐久性の高い材に防腐・防蟻処理を施したので無塗装で使い、木肌の色をそのまま出すようにしました。古い家の雰囲気にもその方がマッチしますからね」。
竣工時
特にメンテナンスは行わず、経年変化を楽しむ
シルバーグレイの落ち着いた色合いに変化
広々とした庭に面したウッドデッキは、経年変化で落ち着いたシルバーグレイの色合いになり古民家との一体感があります。一方、ウッドフェンスはあまり直射日光が当たらない場所に設置されているせいか、まだ木の色が残っています。斉藤さんに日頃のメンテナンスについてお聞きしました。
「メンテナンスは今までとくに何もしていないんですよ。木は経年変化をしていくのが魅力だと思っています。この古民家もそうですが、あえて塗装はせずに木の色のままにして、その変化を楽しんでいます。よくレザーの洋服に例えるのですが、おろしたばかりよりも着古したレザーの方が体に馴染むし、風合いもかっこよくなるでしょう。木も同じだと思います。だから早くいい色に変化しないかなと思っています。
一度、ウッドデッキをデッキブラシで水洗いしたことがあるのですが、いい感じの色が落ちてしまって、それから洗うのはやめました。(笑)でも腐朽してしまうのは嫌なので設計、施工の段階でいろいろ工夫はしています」。
竣工時
柱が直に土に触れないように工夫
日にあたらない部分の経年変化は少ない
ウッドフェンスとウッドデッキの設計は設計士でもある斉藤さんが自ら手掛けています。まずウッドフェンスをつくるときに工夫したポイントをお聞きしました。
「普段、木の塀をつくるとき、柱はアルミなどの金属製ものをつかうことが多いのですが、この塀は柱も飫肥杉にしました。その代わり木の部分が土と直に触れないように、隣の家との土留めのコンクリートにボルトで固定しています。土留めがない部分は、鉄道の枕木を利用して、木の柱が土に接しないようにしています。この枕木は、廃線になって不要になった廃材を再利用しています。
木口の部分から水が浸み込みやすいので塀の上部には笠木をつけています。金属のものを使えばもっといいのかもしれませんが、木でも問題ないようです。後は強風で倒れないように、板は段違いにして間隔を開けて、風が通り抜けるようにしてあります。土に直に接しないようにして、水がたまったり浸み込んだりしないように配慮すれば、木は長持ちすると思います」。
左)土留めのコンクリートにボルトで固定
右)土留めがない部分では廃材の枕木を利用して固定
デッキ下は割栗石を敷いて防草対策
デッキ下に割栗石を敷き、巻き板を施す
次にウッドデッキをつくる際に配慮したポイントをお聞きしました。
「まずデッキの下ですが、雑草が生えてくるのが嫌だったので防草シートを敷いた上に割栗石※を敷き詰めています。コンクリートを打つ方法も手軽なのですが、なるべく自然のものを使いたかったのでこの近所の小川村で採れた石を使っています。
また、野良猫やハクビシンがデッキの下に入りこむと嫌なのでデッキのまわりは幕板で囲いました。あとは塀と同じで、束柱が土と直に接しないよう、束石を使っています。幕板を貼ったのは、束柱や大引に、地面に落ちて撥ね返った雨水がかからないように守る役目もあります。束柱は90mm角、デッキの板材は、強度と耐久性を考えて厚さ43mmの少し厚いものを使っています。
設計するときに配慮したのは、材に無駄がでないようにすることです。材木って3mとか4mとか決まった寸法で流通しているので中途半端な長さで使うとロスが多くなります。なのでなるべくロスがでないように配慮しながら美しく丈夫なものをつくる、それもデザインの大切なポイントだと思っています」。
※ 割栗石:「ぐり石」とも呼ばれ、岩石を人工的に拳より一回りほど大きなサイズに割って作られる石材のこと。
ウッドデッキは家族やペットとの憩いの場
ウッドデッキはペットとの遊び場
ウッドデッキには、ベンチ兼用のスチール製の手すりがつくられています。このベンチは「とても便利で設置して正解だった」と語る斉藤さんにウッドデッキを普段、どのように利用されているのかを伺いました。
「今日も午前中に庭の落葉拾いをした後にベンチに座って一服しました。椅子をわざわざ持ち出さなくても、いつでも腰掛けられるので重宝しています。七輪を持ち出して家族で肉や魚、野菜を炙ってわいわいいいながら食べたり、ペットと遊んだりする憩いのスペースですね」。
今後のお手入れの予定をお聞きすると「メンテナンスは今のところ特に必要ないと思っています。設置してから気が付いたのですが、ウッドデッキがあると太陽の照り返しが部屋の中まで届いて、冬場は暖かくていいのですが、夏場は部屋が暑くなりすぎます。そこで取り外しできるターフを設置しようと考えています。パーゴラのようなものでもいいのですが、夏の日差しを和らげてデッキからの照り返しを防ぎたいですね」。
斉藤さんのお宅のウッドデッキは、屋外にあるもう一つのリビングルームのように家族の憩いの場になっているようです。
施主であり設計者である斉藤洋一氏