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- 築140年の古民家に相応しいウッドフェンス、デッキの普遍性
築140年の古民家に相応しいウッドフェンス、デッキの普遍性
HUCOS協同建設 株式会社の社長である斉藤洋一氏は、築140年の古民家をリノベーションした自宅に見合う、ウッドフェンスとウッドデッキをつくりました。年月を経てなお美しさを保つ木の可能性と魅力についてうかがいました。
木の魅力は履き込んで味を出すデニムに通ずる
支柱は既存ブロック塀の基礎部分や杭として打った枕木に留め、地面から浮かした
HUCOS協同建設 株式会社の社長・斉藤洋一氏が、自宅の庭に作ったウッドフェンスとウッドデッキは、どちらも、九州産のスギの赤身だけを製材した<ObiRED>を用いています。赤身材は木材の芯に近い部分で、腐りにくい性質をもっています。原木の「飫肥(おび)スギ」は特に赤身部分に精油を多く含んでおり、湿気に強いだけでなくシロアリなどの害虫の忌避効果も持つとされています。さらに、防腐効果のある薬剤AZNを加圧注入することにより、耐久性が高められています。斉藤氏はその耐久性を信頼し、塀やデッキには塗装していません。「湿気が貯まらない環境をつくれば、無塗装でも木は長持ちするんですよ。それに、塗装をしないことで経年変化していく姿を見られます。私にとってはそれが木を使うことの楽しみであり、魅力なんです。長年履き込むことで味を出すデニムと同じですね」。
古くなっても保ち続ける木の強さを実感
住宅内も古い梁や土壁にモダン家具をあわせることで、新鮮なインテリアに
木が長年の風雪に耐えることは、斉藤氏の自宅が証明しています。「10年前、この古民家が築130年の時に購入しリノベーションしました。今ではもう築140年ということになりますね。元々古民家好きではなかったので、建て替えするつもりで購入しました。でも、中を見てみると、今ではなかなか手に入らない立派な材木ががっしりと組まれていて、さほど傷んでいない。壊してしまうのは惜しいと思い、手直しして住むことにしたんです」。
斎藤氏は古民家特有の古びた部分を残しながら、現代の暮らしにフィットする快適性を備えるため、内壁に断熱材を施して高断熱・高気密住宅に改造。冬も薪ストーブ1台で十分温まる家へと生まれ変わらせました。
モダンテイストのデッキで新旧の対比を楽しむ
敷地内には蔵もあり、明治期の雰囲気が残る中に新たなデッキが加わった
住まいの庭側には、室内の延長として使えるウッドデッキを造りました。南に面した部屋同士をつなぐ縁側でもあり、リビングの前は奥行きを深くして家族が集って過ごせる広さがあります。シャープなデザインのアイアン手すりをあしらい、モダンなテイストを匂わせるのが斉藤氏のこだわり。古民家にモダン家具を合わせる独特のセンスが、ウッドデッキのデザインにも行き届いています。
ウッドデッキには幕板を張って床下を隠して見た目をスッキリさせ、猫が床下に入り込むことも防いでいます。「ベンチを設けたのは大正解でした。わざわざデッキチェアを出さずにいつでも腰掛けられるので、気軽に家族でバーベキューをしたり、風呂あがりにビールを飲んで涼んだりしています」。
仮に一部が傷んでもDIYで交換できるのが木の良さ
昔の建物と違和感なくなじむのも自然素材である木の特徴
ウッドフェンスは、元からあったブロック塀の基礎を利用し、木の支柱をボルトで固定。塀の両面が同じになるように交互に横板を張り、見た目と風通しに配慮しています。ナチュラルなウッドフェンスは信州の景観に溶け込み、敷地内に建つ古民家や蔵との相性も良好。新旧の木材が入り混じることで、時代を超えた価値が上手く表現されています。
「無塗装の塀が傷んできたときは、その部分だけ簡単に交換できます。スギは硬くて重い南洋材などと違って柔らかいので、下穴を開ける必要もなく持ち運びもしやすい。素人さんのDIYでも十分対応できるでしょう。だから、木が変化していくことを恐れずにどんどん使っていけばいいと思うんですよ」。 140年を経た古民家の木材と、新しい塀やデッキの木材が共存する斎藤家。塀やデッキも時を重ねることで少しずつ色を変え、風格ある古民家や蔵と同化していくことでしょう。