長野県産スギ材で建てた、住み心地のいい木造住宅長野県千曲市稲荷山は、かつては北国西街道(善光寺街道)の宿場町として栄えた町で「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。旧街道から少し離れた静観な住宅地に建つ川田邸は、長野県産スギ材をふんだんに利用した木造2階建ての住宅です。竣工前のお宅にお伺いし、施主の川田さん(仮名)ご家族と設計・施工を担当した寺島工務店の細萱さんにお話をお聞きしました。 目次 温かみのある木の家に住みたい長野県産スギ材の利活用を考えた家づくりメンテナンスを考慮し、外壁には窯業系外壁材を採用家全体を空気で包み込むWB工法を採用根羽村森林組合と提携して原木を調達
温かみのある木の家に住みたい 施主の川田さん(仮名)は奥様と5歳と2歳のお子様の4人家族。新居を木造に決めた理由をお伺いしました。 「家を建てる前に、いろいろな見学会に参加してみました。その中で寺島工務店さんの建てる木の家がとてもいいなと思いました。モデルハウスに入って木の床を歩いたときの感触がとてもよかったです。いろいろなところに木が使われていて、生活をする上でリラックスできると思い家を建てるなら木造にしようと考えました」(ご主人)。 「木造にすると、温かみのある家になりそうだなと思いました。リビングは北欧っぽいイメージにしたかったので白い壁に小物を飾ることができる木の枠の小窓をつけていただきました。玄関から家の中に入ると木の香りがしてとても落ち着きます」(奥様)。 施主のご主人とご家族
長野県産スギ材の利活用を考えた家づくり 1Fには和室も用意。窓枠の部分にはスギ材を採用 設計・施工は、長野市に本社がある寺島工務店。もともと社寺建築をメインとしていた工務店で、現在は木造住宅と社寺が半々の割合。鉄骨造やRC造の木造内装関係や木質化リノベーションの仕事も得意としています。設計・施工をご担当した細萱 隆さんに川田邸の特徴をお聞きしました。 「川田邸は木造2階建てで、長野県産のスギをメインに使っています。柱や土台、大引きはヒノキを使いましたが、梁や桁、小屋束、垂木、筋交などはすべてスギを使っています」。 横架材にもスギを採用した理由をお聞きすると「スギにすると強度を担保するために多少太いものを使うことになるのですが、県産のスギ材利活用という点から、使えるとこにはなるべくスギを使おうと考えました。また、スギは加工しやすく、見た目もきれいなので室内の額縁・木枠・巾木※、ドアなどにはスギを使っています。当社は社寺建築を得意としていて腕のいい大工さんが多いので一つひとつ現場で仕上げていきました。床は、お子様がまだ小さいので傷が付きにくいカラマツのフローリング材を採用しています」。 ※額縁:窓や出入口と周囲の壁が接する部分に取り付ける部材。巾木:壁と床の境目に取り付ける部材。木枠:サッシや建具の枠。 設計・施工を監理した寺島工務店の細萱 隆さん
メンテナンスを考慮し、外壁には窯業系外壁材を採用 外壁は、耐久性、防耐火性に優れた窯業系外壁材を採用 一見すると普通の住宅のように見えますが、構造材から造作材まで長野県産のスギをメインに木材をたくさん使用しています。 「外壁は、木材を現しで使った方が木造であることをアピールできるのですが、後々のメンテナンスや防耐火性を考えて、窯業系外壁材を採用しました。一部を色違いにしてアクセントにしています。玄関のドア周りの外壁は雨水がかからないのでスギ材です。ウッドデッキは梁や桁はスギ材で、柱やデッキ床材、束柱などは保護塗料を塗布したヒノキ材です」(細萱さん)。 屋根は片側の屋根を長く伸ばし、反対側の短い屋根との間に高低差をつけています。 「当初は普通の切妻屋根で設計していたのですが、屋根上部に設置する排気口と間取りの関係から今のような形にしました。外観のアクセントの一つになっていると思います」(細萱さん)。 雨を凌げる玄関周りの外壁はスギ材を採用 施工中の川田邸、柱以外は長野県産スギ材を使用(画像提供:寺島工務店)
家全体を空気で包み込むWB工法を採用 壁紙のWB通気クロスは熱気や化学物質を通気層に逃がす 川田邸は、室内と外の間に空気の通り道(通気層)を設けるWB(ダブルプレス)工法を採用しています。夏は外壁の下部に設けた通気口から外気を取り込みます。外気は壁の中の通気層を上昇して屋根に設けた排気口から湿気や熱気とともに外部に出ていくため蒸し暑さを和らげます。冬は外壁下部の通気口と屋根の排気口を閉じて気密性を向上させます。壁の中の空気の層で家が包まれるので断熱性が向上し暖かく過ごすことができます。外壁下部の通気口には、気温の変化に反応する形状記憶合金を採用してあり気温に応じて通気口が自動的に開閉します。 また、WB工法では、壁紙に通気性のあるコットン素材のWB通気クロスを採用し、室内の熱気だけでなく化学物質やにおいも通気層に逃がします。夏は涼しく、冬は暖かく、クリーンな空気の健康的で暮らしやすい快適な家をめざしています。 各部屋に設置された手動で開閉できる通気口 2階の最上部に設置された排気口
根羽村森林組合と提携して原木を調達 木材は長野県根羽村森林組合から調達(画像提供:寺島工務店) 寺島工務店は2021年に長野県SDGs推進企業の登録を行い、とくに長野県産材の利活用に力を入れています。「当社は木材を長野県下伊那郡の根羽村森林組合と提携して原木から調達しています。この家で使用した木材も根羽村森林組合から調達したものです」(細萱さん)。 地域の森林組合と連携することで、ウッドショックなどの輸入危機に左右されず、安定して質のいい木材を調達することができます。また、地産地消なので輸送コストが削減でき、さらに原木生産者も潤うので次の世代の森づくりに取り組むことが期待でき、さらにスギ材を利活用することは花粉症対策の一助にもなります。 「長野県の木をたくさん使い、WB工法による耐久性が高く、健康的に暮らせる住まいをご提供するのが私たちの使命と考えています」(細萱さん)。 地域のスギ材をふんだんに使った家は、温かく健康的な暮らしを実現できそうです。 長野県産スギ材を使った造作
Story 外構・外装木質化による新たな木材利用の可能性 地場産スギ材でつなぐ、家族の思いと地域林業の未来 長野県産スギ材で建てた、住み心地のいい木造住宅 鹿児島県産材をふんだんに使った木造施設で地域の未来の生き方を切り拓く小浜ビレッジ おすすめ記事 はじめてのウッドフェンス&ウッドデッキのメンテナンス 木を使うことで、日本の自然と社会が豊かになる。子供たちへのメッセージ カテゴリー SDGs エクステリア 木の家 木の街づくり タグ ウッドデッキ ウッドフェンス オフィスビル グランピング 開発秘話 学校・保育園 古民家 公園 公共スペース 雑誌掲載 対談 木の家具 木の雑貨 木の中高層建築物 木造住宅 遊具 JAS構造材 エリア 全国 北海道・東北地方 関東地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 九州地方