木を使うことで、日本の自然と社会が豊かになる。子供たちへのメッセージ

「緑の景観を守ろう」「自然を大切に!」。今では誰もが知る環境の「当たり前」ですが、全国木材協同組合連合会の肥後賢輔さんは木材利用を積極推進しています。なぜ木を使った方が環境や人間にとって良いのか。その価値と利点、また取り組んでいるプロモーションについてお話を伺いました。
全国木材協同組合連合会 肥後賢輔
木づかい子育てネットワーク 理事長 ・埼玉大学教育学部 教授 浅田茂裕

日本の多くの木は使うために植えられた

自然のためには、木はあまり使わない方が良いのでしょうか

そんなことはありません。むしろ、現在はどんどん木を使った方が良い状況です。
ご存知の通り、日本には森林がたくさんあります。緑や自然の景観をきれいと感じるのは大切なことですが、自然を生み出すためだけに営々と植林をしてきたわけではないのです。

戦後間もなく植林を始めた理由は、住宅資材がたくさん必要だったから。大きく育てて、建築用材や木材製品として利用しようと考えていました。しかし時代が進み、「木が使えるぞ」という状態になったのに、プラスチックやコンクリートといった代替の素材に需要を抑えられてしまいました。加えて、大量の木材を海外から輸入しなければ国内の需要に応えられなかったり、日本の山からは運び出すのにコストがかかったりと様々な理由が重なって、国産材を使う機会がぐっと減ってしまったのです。

日本の山の木を使うには、大きなコストがかかってしまう

木材利用における現状と課題は、どのような点にあるのでしょうか

現在日本には52億立方メートルもの森林蓄積があり、これが毎年1億立方メートルずつ増えています。一方、国内における木材使用量は約8千万立方メートルでそのうちの5千万立方メートル超を海外から輸入しています。毎年増え続けている国産材を利用するだけで十分に国内の使用量をまかなえるのに、今でも6割以上を外材が占めているのです。
ただ、最近の情報では、一部の木材輸出国で自国の木を切り過ぎてしまい、「今までのような供給は難しい」という状況になっているという声も聞かれます。

外材が6割以上を占めているのは、国産材の側にも理由があります。日本は道路が狭い、橋の強度やトンネルの天井の高さに制約があり、山から木材を運び出すのにわざわざトラックを変えて積み直す必要があったりします。また一般道路では運べる木材の長さが決まっているので、それに合わせて木材をカットしなければならない。このように、山から運び出すだけでも大きなコストがかかってしまうため、外材との競争になかなか勝てないのです。

木材を適切に利用する必要性を子供たちに伝えたい

そのような中で木材のプロモーションに至った理由を教えてください

森林を守ることは重要ですが、使わずに放置しておくのも問題です。例えばスギを植えて、適切な手入れをせずに放置しておくと病気になったり花粉症の原因になったりします。
また、適切に間伐しないと、1本1本が弱々しくなって、台風や豪雨の多い日本では、山崩れや洪水などで流された立木が大きな被害を発生させる原因の一つになることもあります。
一方、適切な管理がなされた健全な森林が保たれれば、私達は山から多様な恩恵を受けることができます。

キノヘイとキノサクのある日の会話 森林の役割
同時展開されている外構部の木質化対策支援事業(助成金終了)

木を使えば、無機質な世界が有機質に変わっていく

森林は、人間が一度手を加えたら、手を加え続けないといけない。現在、間伐の遅れや伐った後に植えられない等、健全な森づくりの上で心配なことが起こっています。このままの状態が続いたとすると20年後、30年後の日本の森林はどうなってしまうのでしょうか。

そのような危機感から、子供向けに「木材を使うことの大切さ」を知ってもらいたいと思い、プロモーションサイトや動画、またキノヘイ・キノサクといったキャラクターを作りました。今の子供たちが大人になる時、自然や木々に対して正しい知識を持ち、適切に木材を使ってくれるようになることを願っています。

最後に、記事を読んでいる方々にメッセージをお願いします。

これからの日本経済を支えていく上では、木材の利用拡大は重要なカギになると思います。現在主要な経済団体や企業がその可能性に気づき、商業ビルを木材で建築したり、内装に木材を使っていこうという動きが少しずつですが着実に増えていますし、林業の成長産業化によって地方創生を図っていこうという議論も盛んになってきています。

これまで余り木材が使われてこなかった都市部で積極的に木材が使われれば、木材を供給する山側での雇用が生まれ、地域の経済が回り、コンクリートやプラスチックといった無機質な世界から木材や自然素材に囲まれた有機質な世界へと世の中が変わっていくことが期待されます。最近、国際的な流れになりつつあるSDGs(持続可能な開発目標)においても多くの分野で森林や木材利用との関わりが取りあげられています。

ある日の会話 世界を変えるための17の目標

木は人間にとって温かみのある優しい素材です。ぜひ木材の特質とメリットならびに日本の森林の現状をたくさんの方々に知っていただき木をたくさん使っていただきたいと思います。

ある日の会話 木材の良いところ

木育のトップリーダー
浅田茂裕先生に聞く


浅田茂裕先生は、本サイト『Love Kinohei キッズコンテンツ』の監修を担当。木材工学、木質材料学、技術教育学を専門として埼玉大学教育学部にて教授を務めるかたわら、NPO法人 木づかい子育てネットワークの理事長であり、各地で精力的に木育の普及活動を行われています。

木と教育における専門家として、木材が人に与える影響や、木材を積極的に使用することの大切さについてお話を伺いました。
森林には、地面に水をしみ込ませて水を蓄える、二酸化炭素を吸収して酸素を排出する、生物を育み育てる、木材を中心とした資源を生み出す等、様々な役割があります。生態系と人間にとって不可欠な活動を行う森林を守ることは大切ですが、「木を切る=森林を破壊する」という認識は、決して正しくありません。

私たちが考えなければいけないのは、どのように「持続可能な社会を創造するか」ということ。最近ではSDGsが話題となっていますが、そこで日本は「持続可能な消費と生産」「気候変動への対処」を取り組みとして掲げている。適切に木材を使用し、資源の再生産を促すことは、これらに該当します。肥後さんもおっしゃる通り、適度に木を切ることにより環境が守られ、自然と人間に良い影響が生まれているのです。

サイト上では、動画やテキスト形式のコンテンツだけでなく、木育学習を目的とした「木王(MOKUKING!)」という木と森をテーマにしたカードを紹介しています。ゲーム版に使えるカードもありますが、スライドを子供たちに見てもらったり、木育のテーマを探したりすることができます。
加えて森林に関する写真を送ると、自分だけの木王カードがつくることができるお楽しみコンテンツを開発しました。

 
木王(MOKUKING!)
 
また「未来を変えるアイデア」というコンテンツでは、様々な道具を使って森林を取り巻く課題を解決していきます。こちらはたんに知識を伝えるだけでなく、一見無関係な道具を使って実際の課題を考えてもらうことで、創造性を刺激することを目的としました。

私たち大人は今起きている課題の解決に努めますが、将来生じる課題は、いつか大人になる子供たちが解決しなければいけません。子供たちの想像力により、思いもよらない方法で森林課題の解決策が生まれるかもしれない。あえて「カメラ」「ブルドーザー」「百科事典」といった、関係があったりなかったりする道具を用意しているのもそのためです。子供たちへの可能性と期待が、このコンテンツには込められています。
 
 
現代では、木を切って得られる価値が生活において重要な地位を占めています。木の製品に触れることでぬくもりやゆとりを感じられたり、本当の豊かさを感じるきっかけになったりと、その良さが再認識されています。ご家庭でも学校の授業でも、本サイトをはじめとした様々な情報に触れ、森林と木材についてもっと知っていただきたいと思います。
 

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