地場産スギ材でつなぐ、家族の思いと地域林業の未来宮城県栗原市の豊かな田園地帯に建つ山本さん(仮名)の家は、建材の地産地消を意識した家づくりにより、構造材の80%以上を国産のスギ材が占めています。住まい手の山本さんと、設計・施工を担当したエネサンス東北の今野稔久さんにお話を伺いました。 目次 暖かな木の家で暮らしたい家づくりで地元の林業振興を支援ウッドデッキとつながる開放的なダイニングスギの表情を楽しむウッドデッキ夫の思いを受け継いだ家に暮らす幸せ
暖かな木の家で暮らしたい 広々とした田んぼの中を車で走らせると、小高い斜面の中腹に山本さんの新居が見えてきました。シャキッとした片流れの屋根や軒の水平ラインがモダンな佇まいを見せつつ、落ち着いた色調が自然豊かな風景になじんでいます。 一家は、母と長男夫婦の3人家族です。築45年ほどだった以前の家は、南側に大きな座敷が並ぶ昔ながらの間取りで、70坪の広さがありました。しかし老朽化が進み、冬の寒さが厳しかったため、最初はリフォームを検討していたそうです。ところが、見積もりを取ってみると1千万円近くの費用がかかることが判明。そのため、思い切って新築を決断し、暖かく快適な家を建てることに方針を変更しました。 設計・施工を担当したのは、株式会社エネサンス東北 住宅事業部。電気やガスといった地域のエネルギー供給を担う企業で、省エネ性能の高い家づくりにも積極的に取り組んでいます。お母様からの「とにかく暖かい家を」という要望を受け、断熱性や気密性を高め、ZEH基準をクリアする高性能な家を計画しました。 お母様を挟み、エネサンス東北の今野さん(右)と畠山さん(左)
家づくりで地元の林業振興を支援 リビング前には広々した環境を楽しめるウッドデッキをつくった 長男はJAにお勤めで、地元の農産物の流通を支援する立場から林業の振興にも積極的です。そのため、家づくりにも地元産の木材を使用した地産地消を希望していました。構造材の83%は国産のスギ材が使われ、そのうち44%が「優良みやぎ材」という県産材。使用箇所は、軸組、小屋、床のネダレス合板など、多岐にわたります。 設計担当の今野稔久さんに、スギ材を構造に使用するメリットを伺ったところ、「スギ材にはしなやかさがあり、供給量が豊富で入手しやすい点が最大のメリットです」と説明してくださいました。 設計を担当した今野稔久さん
ウッドデッキとつながる開放的なダイニング 一家団らんのベースとなるダイニング 間取りは、玄関の左側に仏間とお母様の寝室、右側にリビング・ダイニング・キッチンを配置しました。高台に位置しているため、開放感と眺めの良さを楽しむことができます。そこでダイニングの前には、広さ4畳半ほどのウッドデッキを設けました。フルオープン可能なサッシを採用することで、室内とウッドデッキの自然な連続感が誕生。これにより、半戸外空間でバーベキューを気軽に楽しむことができます。 フルオープン可能なサッシを採用しウッドデッキと室内をつなげた
スギの表情を楽しむウッドデッキ ウッドデッキの軒部分のみ、スギの構造材を露出させてデザインのスパイスに スギ材は構造部分に使用されているため、内装には表れていませんが、ウッドデッキを覆う屋根の部分では梁と束を露出させ(いわゆる「あらわし」)、コテージのようなナチュラルな雰囲気をつくり出しています。家を構成する建材がこうして見えることは、住む人に安心感を与えてくれます。深い軒が雨や紫外線から木を守り、長くその美しさを楽しめるでしょう。 梁の力強さや自然な木目を眺めていると木の家であることを実感できる
夫の思いを受け継いだ家に暮らす幸せ ダイニング、リビング、ウッドデッキと心地よい居場所がたくさん 昼間はお母様が一人でのんびりと過ごしています。延床面積は70坪から40坪にダウンサイズし、余裕を持ちながらも無駄のないジャストサイズになったことで、掃除や光熱費の負担が軽減されました。 「隙間風がなく、冬暖かく夏涼しい家は最高ですね。息子が快適な家を建ててくれたおかげで、ダイニングでは景色を眺めながらお茶を飲み、リビングではソファでゆっくりとテレビを見て、気ままで安心できる老後を送っています」とお母様。仏間には、以前の家で亡き夫が愛用していた自在鉤とケヤキの火鉢が移設されました。夫が建てた家を取り壊すことには残念な思いもありましたが、こうして思いをしっかりと息子の代に引き継ぐことができたことに安堵し、幸せを噛み締めているお母様です。 亡き夫が建てた家の面影を仏間に取り入れた
Story 外構・外装木質化による新たな木材利用の可能性 地場産スギ材でつなぐ、家族の思いと地域林業の未来 長野県産スギ材で建てた、住み心地のいい木造住宅 鹿児島県産材をふんだんに使った木造施設で地域の未来の生き方を切り拓く小浜ビレッジ おすすめ記事 はじめてのウッドフェンス&ウッドデッキのメンテナンス 木を使うことで、日本の自然と社会が豊かになる。子供たちへのメッセージ カテゴリー SDGs エクステリア 木の家 木の街づくり タグ ウッドデッキ ウッドフェンス オフィスビル グランピング 開発秘話 学校・保育園 古民家 公園 公共スペース 雑誌掲載 対談 木の家具 木の雑貨 木の中高層建築物 木造住宅 遊具 JAS構造材 エリア 全国 北海道・東北地方 関東地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 九州地方