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- 四世代続く庭。~陽当たりの悪い日本庭園を家族が集い楽しむ庭へ~
四世代続く庭。
~陽当たりの悪い日本庭園を家族が集い楽しむ庭へ~
50年前に開発された千葉県内の団地に建つ四世代続く川島様(仮名)のお住まい。お庭のリフォームの解体工事から完成までを追い、施主である川島様と設計・施工を請け負った作庭家(さくていか)の矢藤昭憲(やとうあきのり)氏にお話を伺いました。
伸び放題の樹木、面積は広いのに使えない庭
なぜ、庭のリフォームを検討されたのでしょうか?
川島様:「この家は、義父が45年ほど前に建てました。母屋の他に学生用の木造2階建てのアパートも建てました。3~4人の学生が生活していた時期もありましたが、時代の変化とともに減り、十数年ほど前からは倉庫として使っています。このアパートのせいで母屋の居間は陽当たりが悪く、昼間でも電灯が必要なほど暗く、冬は寒く石油ストーブが欠かせませんでした。
母屋と一緒に作られた日本庭園は、樹木が育ちすぎて、陽が入らず、風通しも悪くて、好きなガーデニングや土いじりもできない状態でした。
また、家を囲う塀にも問題がありました。生垣に植えられたカイヅカイブキ(貝塚息吹)が育ちすぎて、隙間ができて目隠しの役目を果たさなくなりました。替わりにバラなどを植えましたが上手くいかず手入れも大変でした」
かつて学生に貸していたアパート。1Fの角部屋から見えるはずの梅の木もほかの樹木に埋もれてしまっている
ブロック塀は植物で覆われ土台もぐらついていた
庭のリフォームを決断した理由を教えてください
川島様:「ブロック塀や庭、古くなったアパートをどうにかしなくては、と思っていました。娘や孫達が度々帰ってきてくれるので、もっと健やかに過ごせるような明るい庭にしたいとの思いから庭のリフォームを決断しました。
リフォーム工事をお願いした矢藤さんと庭の隅々を採寸しながら、少しづつ庭のイメージを膨らませていきました」
手入れのしやすい空間になるよう、打合せをこまめに重ねた
居間のように楽しめる空間を求めて
どのような庭にしたいですか?
川島様:「樹木が育ちすぎて、陽が当たらず暗い庭だったので、とにかく明るい庭にしたいと思いました。母屋が狭いので、母屋とつながった居間のようにして楽しめる空間ができたら、と思いました。孫たちが素足のまま芝生の上を気ままに歩ける、太陽の光を浴びて、土いじりができる庭にしたいと。都会暮らしや学校生活でのストレス、アトピーやアレルギーなど、現代病ともいえる体質の孫たちのための憩いの場、気軽に自然に触れられる場を作ってあげたかったのです。将来、子供たちが何か作ったり、孫たちが自由に遊べたりするようなシンプルで素敵な空間を矢藤さんから提案してもらいました」
国産材で外構を作る
義父の植えた梅の木はシンボルツリーとして残す。梅の実を使って梅酒や梅酢を作って子どもたちにふるまう習慣を続けていきたい。
木製の塀に不安はなかったでしょうか?
川島様:「アルミやコンクリートなどは冷たい印象で、木造の古い母屋には合いませんし、より健康的で健やかな情感が育つような空間にしたかったので、木材を使ってできるだけ自然になじむ塀を作っていただきました。すべて日本産の木材で設計してもらったのですが、木は腐りやすかったり、すぐ傷んだりしてしまうのではないかという不安も正直ありました。しかし、予算や自由度を考えると木材が一番良いと矢藤さんから勧めていただきました」
矢藤氏:「地際と接しないようにすることが耐久性につながります。 今回はモルタルで柱を固定しました。ウッドフェンスには腐朽を防ぐ薬剤を注入した国産の杉材を使っています。また、雨がたまりやすい天板には板をかぶせた上で、さらに板金を取り付けました。デッキ板には45mm厚の檜材を使うことで、ハードウッドなどの輸入材と同等の耐久性を持つと考えています。根太とデッキ板の間にプラスチック製のパッキンを挟み込んで湿度対策を施しました」
デッキ土台の外から見て見えない奥の柱には、鋼製束を使用
子や孫たちと明るくなった庭でBBQを楽しむ。
癒しのひととき
完成したお庭はいかがでしょうか?
川島様:「とにかくこんなに明るくて、広くて気持ちの良い空間を手に入れることができて、気持ちまで明るくなります。洗濯ものもよく乾きます。(笑)
娘が希望していた庭でのバーベキューは、孫たちが友達を連れて来て賑やかに行うことができました。
リフォームする前は生垣の隙間から見える通行人の目が気になりましたが、今はウッドフェンスがやさしく庭を囲んでくれているので、とても安心です。
また、庭がスッキリしたことで落ち葉などの掃除も必要なくなりました」
矢藤氏:「ウッドフェンスは、横張りとして、単調にならないように厚みのある材で柱と横板に陰影をつけました。
ウッドデッキは敷地全体のバランスを考え、奥に向かって狭まるデザインとすることで、実際よりも奥行があるように見える効果を狙っています。
敷地が広い場合、構築物の(今回のデッキ)面積を広くすると植物などの面積が減って管理は楽になりますが、施工費が高くなって、味気のない空間になりがちです。逆に、植物(今回の芝生などの植栽)を多くすると管理が大変になります。お客様にとって管理のしやすい空間を作り上げることがとても大事です」
庭を使った新しいライフスタイル
今後はどのように庭を利用しますか?
川島様:「リフォームのための片付けは大変でしたが、これも終活のひとつかもしれないと思って頑張りました。(笑)
近所の友人は広いデッキでお茶会をしたい、娘たちはテントを張ってキャンプをしたい、大学生になる孫はひのきのデッキや芝生でヨガをしたいなど、私以上に皆さんがこの庭を使うのを楽しみにしてくれています。
新しくできた庭も、デッキや塀も月日の経過とともに変化していくと思いますが、その変化を子供たちとともに見守りつついつまでも愛おしんでいきたいと思っています」
矢藤氏:「庭は年月とともに姿を変えていきます。したがって、完成時が終わりではなく、むしろ始まりと位置付けています。
樹木の生長に合わせた剪定や、数年後に塀を塗り直したり、芝生の手入れなどのメンテナンスが重要です。いつでもお気軽にご相談いただきたいと思います」
子どもたちのリクエストで購入したハンモックは大人気