台風に配慮した設計。景観に合う優しさと強さを兼ね備えたウッドフェンス鹿児島県東部、大隅半島の北部に位置する曽於市は畜産や畑作を中心とした農業が盛んな地域。今回訪れた鳥井邸も風光明媚な農地の中にあります。2023年9月、新築の住まいを包む天然木でつくられた木製のフェンスが設置されました。ウッドフェンスを建てられた施主の鳥井聡様と施工会社の株式会社平田建設・代表取締役平田新一氏にウッドフェンス工事について詳しく伺いました。 目次 広大な農地に建てられた田園風景に溶け込むウッドフェンス地元の木で塀をつくりたい!施主の希望を叶える木製の塀は地産地消も実現一級建築士の想いが込められた台風による倒壊防止策地域材でつくられたウッドフェンスでカーボンニュートラルに貢献
広大な農地に建てられた田園風景に溶け込むウッドフェンス シックな建築に似合う天然木のウッドフェンス ご自宅が完成して塀をつくるなら木の塀にしたかったと話す施主の鳥井様。隣地との境界には擁壁としてのブロック塀が建ち、塀はない状態でした。様々なフェンスがある中であえて木塀を取り入れた経緯を施主の鳥井様に伺いました。 「県内で長年林業に携わっており、仕事柄、木の良さを知っていたので最初から木の塀をつくりたいと思っていました。地元の製材所さんに相談した所、建築会社の平田さんを紹介されました。平田さんの会社は地域材を積極的に使っている業者として鹿児島県が認定する「緑の工務店」に登録されており、ぜひにとお願いしました」。 木に理解があり、ウッドフェンスを希望されましたが木を外構に使う事への不安は全くなかったのでしょうか? 「木はそのまま使えば鉄に比べて強度・耐久性は低いですが、きちんと防腐処理を行った材料に保護塗料を塗ってメンテナンスすれば長持ちする事は理解していました。私自身も木材を普及する立場でありますが詳しい数値まではわからないため、専門家の平田さんに相談しました」。 木材を扱う仕事をされ、その知識に長けている鳥井様。木の魅力については、「木材を取り入れたかった理由は自然素材を使いたかったから。木目や節などナチュラルな風合いは本物の木じゃないと出せないですね。ここは宮崎と鹿児島の県境にあり、南側は金御岳(かねみだけ)連山。北側は霧島連山に囲まれています。この自然の風景にマッチするのはアルミじゃなくて、自然素材が合ってると思います。また、子供たちが庭でボール遊びやバスケットをする機会が多いため、アルミフェンスだとボールが当たって曲がったり、へこんだりしますがしっかりと加工処理された木は丈夫である所も魅力ですね」。 施主 鳥井聡様 敷地の南側は子供たちが遊べる広い庭が広がる
地元の木で塀をつくりたい!施主の希望を叶える木製の塀は地産地消も実現 建築正面に新設された化粧ブロック上に建つウッドフェンス 鹿児島県曽於市財部(そおしたからべ)の地で昭和46年創業の株式会社平田建設。鹿児島県内で個人宅や注文住宅を多く手がける傍ら、公共事業も行う建築会社です。代表取締役の平田新一氏にウッドフェンス工事について詳しく語って頂きました。 「使用した材は地スギ、曽於市財部地域のスギです。この財部地域は鹿児島県では1番の林業先進地として有名で、間伐等の適切な森林整備が行われて来たため、木目がキレイで良質な材が豊富です。柱と笠木に使用している材は防腐処理剤ACQを加圧注入したJAS性能区分K4相当。板材はK3の材を採用しました。この地域は台風が通る事が多いので、板厚は一般的な塀に比べて40ミリと厚くし、塀の高さは1300ミリに設定しました。目隠しの意味合いもありますがこれ以上高くすると台風により倒壊する可能性があるため、台風の風圧に耐えられる高さを計算して設計しました。また、風が抜けるよう板の隙間を15ミリに拡げました。保護塗料は撥水性の高いステンプルーフを現場で2回塗りました」。 施工時に苦心した作業を伺うと「この土地が田畑に囲まれている特殊な環境下のため、敷地の東側、真隣が田んぼでちょうど田植えの時期と重なり、泥んこ状態のため外から作業が行う事ができず、境界の内側から身を乗り出して作業を行ったことですね。60mあったので大変でした」。 株式会社平田建設 代表取締役平田新一氏 敷地の東側。真横が田んぼ
一級建築士の想いが込められた台風による倒壊防止策 道路に面した正面の板材は木目が美しい材を施主自らセレクト ウッドフェンス工事において、フェンスを支える基礎部と柱の施工は重要な作業。基礎部と柱部分をよく見てみるとブロック塀に頑丈そうな鋼板が深く差し込まれています。その柱部分について施工を請け負った一級建築士である平田氏に解説して頂きました。 「宮崎・鹿児島は台風が多く、特にこの地域は周りに建物が少ないため台風の影響を受けやすい環境です。木だけで塀をつくると台風に耐えられず、倒壊する恐れがありました。施主様のお父様が経営されている鉄工所にお願いして、亜鉛メッキ加工されたL型の鋼板を通常厚さ4ミリの所、2ミリ厚くして6ミリにし、基礎と柱をさらに頑丈にしました。これにより台風に耐えられる塀ができました」。 鋼板を厚くする事で台風に耐え得る柱となるんですね。基礎と柱を結ぶ鋼板はどれくらいの深さまで基礎ブロックに差し込まれているのでしょうか? 「鋼板の見えない部分はブロック塀の中を貫通して150ミリ差し込んでいます。木はいい感じで経年変化しますが亜鉛メッキ鋼板は腐りにくいので柱は木材と鋼板を緊結して、強固な支柱として制作しました」。 しっかりと補強されたフェンスの裏側 地際は木を浮かせることで雨仕舞いしている
地域材でつくられたウッドフェンスでカーボンニュートラルに貢献 台風による倒壊のリスクを考慮したウッドフェンス。完成した塀を見た鳥井様は、「思っていた以上に風景にマッチしていてウッドフェンスにして良かったです。近所の反応も良く、家族も喜んでいます。木を使うことで森林での循環が生まれ、カーボンニュートラルにつながっていくので環境に優しいと思っています。仕事だけでなく、プライベートでもカーボンニュートラルに貢献、参加できるのはうれしいですね。この木塀を紹介してさらなる木材利用の推進ができればと思っています」。 ウッドデッキをDIYされた鳥井様。今後のプランはありますかとの問いに「最近ドッグランを制作中で柵はネットで仮につくっています。今後ドッグランの柵を木でつくりたいと思っています」と笑顔で語られました。 メンテナンスについて平田氏は、「今回施工した塀は最低10年は持つと思います。塀の塗装色はウォールナットブラウンという木目が映える薄い色を提案させて頂きました。木は今後退色するので5年後10年後に経年変化を楽しまれた後、再塗装する際は気分を変えてお好みの色を塗るのも良いと思います」。 林業に携わる施主の希望に応えた天然木のウッドフェンス。地産地消を実現した木製の塀に自然環境への願いが込められていました。 庭につくられたウッドデッキとドッグラン
Story 古くて新しい?国産木材をふんだんに活用できるCLTログハウス構法で建てた「上滝(かみだき)こどものもり」 外構・外装木質化による新たな木材利用の可能性 地場産スギ材でつなぐ、家族の思いと地域林業の未来 長野県産スギ材で建てた、住み心地のいい木造住宅 おすすめ記事 はじめてのウッドフェンス&ウッドデッキのメンテナンス 木を使うことで、日本の自然と社会が豊かになる。子供たちへのメッセージ カテゴリー SDGs エクステリア 木の家 木の街づくり タグ ウッドデッキ ウッドフェンス オフィスビル グランピング 開発秘話 学校・保育園 古民家 公園 公共スペース 雑誌掲載 対談 木の家具 木の雑貨 木の中高層建築物 木造住宅 遊具 JAS構造材 エリア 全国 北海道・東北地方 関東地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 九州地方