栃木県のスギをふんだんに使用県木造建築のシンボルとなる栃木県林業大学校2024年4月に、栃木県の林業を担う人材を育成する栃木県林業大学校が、栃木県林業センターに併設するかたちで開校しました。本館(研修・研究棟)、全天候型実習棟、林業機械整備棟の3棟は、栃木県産材をフルに活用した木造建築です。学び舎として、実技研修の場として、大学や企業との産官学連携の研究開発の場として大きな役割を担っています。林業大学校 校長の大野英克さんからお話を伺いました。 目次 栃木県の森林・木材産業を担う人材育成機関コンセプトは、栃木県産材100%!教材にもモデルルームにもなる研修・研究棟構造材のすべてに県産スギ材を採用し大空間を実現JAS機械等級区分で栃木県の木材の“強さ”を示す
栃木県の森林・木材産業を担う人材育成機関 エントランスホールに使われている鹿沼産の樹齢120年以上のスギ丸太柱 本校が開校した背景には、SDGsや脱炭素という世界的な潮流の中で、林業・木材産業の役割は非常に大きくなっていることがあげられます。そして、栃木県も全国と同じように間伐という間引き林業をやってきましたが、現在の森林の樹木は外材と競争ができる太さにまで育ってきています。 昔は森林に投資をして、木を植えて育てる林業でしたが、今はすぐに伐ることができる林業になってきています。収穫して利益を得て、次の世代の森林をつくるために木を植えて育てる林業でなければなりません。しかし、森林は育っているのに、それを活かす人材が減っているのが実情です。 そこで森林の恵みを活かすことができるフォレスターを育てたい!欧米のフォレスターと同じように広い分野で活躍できる人材を育成することが必要だと考えました。本校の特長としては、林業実務の技術面はもちろんですが、学生たちには大型林業機械の免許など15の資格をまず取得していただき、林業の先進技術や楽しさを知った後に植栽や下刈りなどの作業を体験するというカリキュラムにしています。 そして国内屈指の木材研究機関である栃木県林業センターが同じ場所にあることで、学生と研究員がお互い交流できることが大きな強みとなっています。 栃木県環境森林部参事及び林業大学校校長と林業センター場長を兼務する大野英克さん
コンセプトは、栃木県産材100%! 玄関ポーチに立つ4本の30cm角のスギ柱が象徴的 本校の建物は栃木県産材100%をコンセプトにしてつくりました。目に見える部分に使われる造作材も、目に見えない部分の構造材や下地材もすべて栃木県の木材を使用してこの大空間を実現しています。建築を進めるにあたっては基本構想の段階から我々も参加しました。 また、栃木県木材業協同組合連合会の中に中大規模木造建築推進委員会が設置されていて、そこに木材コーディネーターがいます。この規模の建物になると木材調達のボリュームも大きくなるのですが、木材生産流通に精通したコーディネーターが、会員に配分するなど工夫を凝らして大量な県産材を効率よく調達しました。 また、森林所有者から素材生産業者、製材工場、プレカット工場など県内の木材関係者がスクラムを組むことで短時間に価格を抑えて木材を調達・加工することができました。さらに、一部を除いて一般流通材や住宅用金物を使用して設計し、効率化とコストダウンを図っています。雨水によって腐朽しやすい外壁などは無理に木を使わず、住宅用サイディング材を採用してメンテナンスのしやすさに配慮しています。 2階大廊下の柱は日光街道の並木をイメージ
教材にもモデルルームにもなる研修・研究棟 4本の丸太柱と20mの大スパントラスで大空間を実現 学生たちの学び舎である本館(研修・研究棟)の延べ床面積は約600坪。本館だけで約600立米の木材が使われています。エントランスを入ってすぐの交流スペースには直径70㎝超の鹿沼産スギの丸太柱が4本立ち、220平方メートルの大空間をつくっています。 また、教室や大講堂、資料室は平行弦トラス、変形トラス、張弦トラス等それぞれ違った架構形式を採用し、構造を現しにしています。トラスの上弦材・下弦材は県産スギの集成材または無垢材です。 床や壁面も様々な栃木県産材を工夫して使用しているので、学生たちが実際に見て触れることができる教材となっています。 また、大講堂は一般的なコンビニエンスストアと同程度の広さ、教室は一般住宅と同程度の広さにしてあり、栃木県産材を活用した建築事例として企業や設計会社の方々からも注目されています。 西棟2階 大講義室…変形平行弦トラス 東棟1階 研究資料室…大梁(写真提供:栃木県林業大学校) 東棟2階 教室…平行弦トラス 西棟2階 資料室…張弦梁(写真提供:栃木県林業大学校)
構造材のすべてに県産スギ材を採用し大空間を実現 広大な空間で伐倒練習機によるトレーニングなどを行う 全天候型実習棟は、雨天時でもチェーンソー伐倒練習ができる施設です。実習室は、柱や登梁、ブレースに大断面のスギ集成材を用い、天井高が9m、面積が約290平方メートルの柱のない大空間を実現しました。学生たちはここで伐倒練習機を使ったチェーンソー技術習得のトレーニング等を行っています。 林業機械整備棟は、プロセッサ、ハーベスタ、フェラーバンチャ、グラップルなどの高性能林業機械を収納し整備することができる施設です。こちらは一般流通サイズのスギ無垢材と集成材を併用して建てられています。いずれの建物も構造材はすべて県産スギ材・壁面はヒノキ合板を使用して建てられています。 栃木県は雪が少ないので根曲がりのない通直・完満で強度の高い木材がとれます。日本の林業・木材産業は、長年、主に住宅の建築用材をやってきましたが、1棟の家に使う木材で縦に使う柱は約3割、梁や桁など横に使うものが約7割です。しかし、梁や桁のほとんどは強度があるといわれている外材(マツ類)が使われています。 栃木県林業センターの木材研究チームでは、横架材を外材から県産スギに置き換えられないかと強度試験を繰り返し行い、栃木県産スギであれば十分に梁や桁に使用できるという実験データを得ています。それを証明しているのが、構造材のすべて県産スギを用いたこれらの建物です。 大きな高性能林業機械を収納し、整備などを行います
JAS機械等級区分で栃木県の木材の“強さ”を示す 栃木県の木材をふんだんに使用した東棟1階の校長室 先にお話ししたように、栃木の木は強度が高く構造材として幅広く利活用できます。県内の製材や木材加工の事業者も充実していますし、首都圏に近いという地の利もあります。 しかし、今の時代は、数値で示すことができないとなかなか木材を使ってもらえません。かつては“無節”といった目で見える品質で勝負してきましたが、これからは“強度”をはっきりと見える化させないといけない。そこでJASの機械等級区分が大きな武器になります。 県では、大規模工場におけるKD化に加え、機械等級区分JAS認証工場を推進しています。(5社取得、3社申請中)。林業の担い手を育成する当校と県内の様々な木材関連事業者、建設会社、研究機関など産学官が力を合わせることで栃木県の木材の利活用を推進し、次の世代の森林づくりを進めていければと思っています。 林業センターの木材研究施設は“オープンラボラトリー”という位置づけで開かれた研究室にしています。林業大学校も“オープンスクール”という発想で地域の子供たち、自治会、企業や団体の皆さまにさまざまなかたちで利用していただき、栃木のスギやヒノキの良さを広めていきたいと思います。 栃木県の木材について熱く語る大野さん
Story 栃木県のスギをふんだんに使用県木造建築のシンボルとなる栃木県林業大学校 地域の製材工場から荒材を仕入れ、乾燥とモルダー加工をして製品化。 将来はJAS認定を取得し、JAS構造材の安定供給をめざす肥後木材。 軽やかなデザインでプライバシーを守る頑丈で長持ちする木の塀の未来形 DIYで立てた国産材の木の塀が暮らしの質をグレードアップ おすすめ記事 古くて新しい?国産木材をふんだんに活用できるCLTログハウス構法で建てた「上滝(かみだき)こどものもり」 長野県産スギ材で建てた、住み心地のいい木造住宅 カテゴリー SDGs エクステリア 木の家 木の街づくり タグ ウッドデッキ ウッドフェンス オフィスビル グランピング 開発秘話 学校・保育園 古民家 公園 公共スペース 雑誌掲載 対談 木の家具 木の雑貨 木の中高層建築物 木造住宅 遊具 JAS構造材 エリア 全国 北海道・東北地方 関東地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 九州地方