国産スギ大径木をキャンプ場の外構設備で有効活用する
「ogawa GRAND lodge FIELD」の取り組み

柏市手賀地区は手賀沼の東南側に位置するのどかな田園地帯。「ogawa GRAND lodge FIELD」は、ショートコースゴルフ場の跡地をうまく生かしたアウトドアブランド「ogawa」直営のキャンプ場です。場内はオートキャンプができるオートサイト、一人から数人で自由にキャンプを楽しめるソロフリーサイト、ペット同伴できる区画サイトやウッドデッキ付きのトレーラーハウス（準備中）など現在約70サイトが設けられています。また、キャンプ用品やアウトドア用品を取り揃えたogawaコンセプトストア「ogawa GRAND lodge」、12月から5月までいちご狩りができるいちご農園「ogawa GRAND FARM」が併設されています。

キャンプ場内に木の外構設備を設けた理由を衛藤さんにお聞きしました。「私たちの商品の一つである常設用テントをこのキャンプ場に設置したいと考えていました。別の地区でウッドデッキの上に常設テントを設置した事例があったので、ここでもやってみようと思ったのがきっかけです。キャンプ場の景観には、鉄やコンクリート等の人工的なものより、天然素材の木材の方が馴染むと思っています。樹脂製の擬木を使うこともありますが、やはり無垢の木を使うと気持ちが落ち着きます。本当に木には人を落ち着いた気分にさせてくれる何かがあると思っています」。

今回のプロジェクトでは、キャンプ場内に12.8m×7.4mの大型ウッドデッキを2基、丸太を半裁して作ったベンチを8基、木テーブルを2基設置しています。設計・施工を担当したのは東京・木場に本社を構え、長い歴史を持つ木材問屋の長谷萬です。担当の坂口さんにプロジェクトの狙いをお聞きしました。「今回のプロジェクトは “外構部の木質化対策支援事業 企画提案型実証事業”の一つとして実施しています。その中の企画提案における一番の要が国産スギ大径木の有効活用です。戦後に植えられたスギやヒノキは、利用期を迎え今後、多くの大径木の出材が見込まれます。

しかし、一方で木造住宅の需要は減少しています。そこで大径木を住宅建材用の柱や梁ではなく、外構部材の板材に製材することで活用できないかと考えました。板材は、2×（ツーバイ）材と呼ばれる寸法に加工しています。デッキ床材は38×140mm（2×6）、手すりは19×89mm（1×4）です。汎用性を考慮してホームセンターなどで売られているSPF材の規格寸法に合わせて、大径木から板材をとった場合の歩留まりの良さを検証しています」。また、30㎝以上の丸太をそのまま外構部材として活用することに取り組みました。「半裁した丸太をそのまま使って長さ1.8mの丸太ベンチを作製。キャンプファイヤ台を囲むようにサークル状に配置し、人が集まれる空間をつくりました」。

今回使用している木材は、すべて群馬県産のスギ材です。「弊社の工場が群馬県にあるため、原木は近隣の群馬県の森林から調達し、製材、乾燥から加工、防腐防蟻処理まですべて群馬県内で行い、輸送コストの低減化を図っています」。部材をすべて群馬の工場で加工し防腐処理してから現場に出荷することで現場での作業工数を減らしています。「デッキ材、柱材、束材はあらかじめ工場で定寸カットした部材を現場で組み立てるだけにしました。現場で極力ゴミを出さず、現場の工数を減らし工期を短縮するためにデッキの手すり部分もパネル化したものを防腐処理後に搬入し、現場で柱間に建込みビス止めにしています」。

また、あえて国産スギ材にこだわった理由をお聞きしました。「スギでも防腐防蟻処理を施し木材保護塗料を併用することで外構材として使用できる耐久性があることを実証したいと思いました。使用した木材は工場で部材をカットし、ボルト穴を開けた状態で加圧注入による防腐防蟻処理を行い、JAS基準のK4 相当の耐久性を持たせています。その上でデッキには屋外木部用の木材保護塗料のキシラデコールアクオステージを二度塗りしました」。また、コンクリート土台と束柱の間には住宅用基礎パッキンを挿入し、さらに根太と床材の間にゴムシートを敷いて水の浸透を防く対策をしています。「床材と根太材はビスで止めて密着しているので、その間にゴムシートを敷きました。メンテナンス時に、床材を1枚剥してみて、ゴムシートの効果があるかどうか検証してみようと思っています」。

キャンプ場オープンに設置されたパーゴラを利用して木製のテーブルセットが今回2基併設されています。支配人の小室さんは「ご家族連れのお客様も多いので、場内を散策したときにこういったテーブルやベンチがあるととても便利です。休憩や昼食の場としてご利用いただいています。木は触ったときの感触が柔らかく温もりを感じるので、安心して子どもたちを遊ばせることができるようです」。2基あるテーブルセットのうち丘の上に設置したテーブルは車椅子でも利用できるように設計されています。「駐車場から丘の上までは車椅子で簡単に移動できるので、このテーブルから景観を楽しんでいただければと思います。障がいがある方でも自然の素晴らしさを楽しんでいただきたいです」と小室さんは話します。

ウッドデッキ等のメンテナンスは、施工した長谷萬が5年目までは最低でも年に１回は目視検査と打診検査を実施する予定です。坂口さんは「重要なのは日々の目視検査です。クラックや表面のササクレ等のチェックポイントのリストを作成してお渡ししてあるので、キャンプ場のスタッフの方が日々の清掃などのときに目視で確認をしていただければと思っています」。
 

「日本ではウッドデッキはハードウッドと呼ばれる外国産の広葉樹を使うことが多いですが、この実証事業で国産針葉樹のスギでも適切な防腐防蟻処理を施せば、問題なく外構で使えることを実証し、普及していきたいです。いま利用期を迎えた日本の森林からはスギやヒノキ等多くの大径木の出材が見込まれます。これをしっかり活用していかないと森林循環のサイクルに影響が生じます。炭素固定やカーボンニュートラルといった問題も加味しながら、大径木を価値高に使っていかなければなりません。弊社では、丸太の価値を高める使い方をして、間接的にですが林業を支援していければと考えています」と坂口さんは主張します。

また、衛藤さんは「ウッドデッキの上に立てた常設テントは、学校の自然教育のためのグループ宿泊などに利用していただきたい」と話します。「キャンプ場では、積極的に木をつかった設備や施設を導入していきたいと思っています。今後、5年、10年経って木が経年変化をしたときに金属やコンクリートとどう違っていくのかを検証していきたいです。私自身は手賀の景観を生かしていくには、木の設備はとてもいいと思っています。これから、お客様からどんな反応があるかとても楽しみです。常設テントと合わせてウッドデッキもお客様にPRしていきたいです」。住宅建材用だけでなく外構にも積極的に国産材を使っていく取り組みに大いに期待したいと思います。