庭師による考え抜かれた古式ゆかしいウッドフェンス東京都の東南端に位置するベッドタウン、江戸川区。小松菜の発祥の地とされ、住宅地以外にも農地が多く見られます。江戸川区東部にある篠崎町は、まさに住宅街でありながら農地が点在するエリア。今回は昨年11月、家の建て替えに合わせ、造園を請け負われた庭師の株式会社木村グリーンガーデナー代表取締役木村博明氏にウッドフェンス工事についてお話を伺いました。 目次 瀟洒な日本建築を和モダンに演出する黒塀少しだけ人の気配が感じられるウッドフェンスに隠された機能重厚感のある大和塀に合う御影石の石垣施主の希望を叶えたメンテナンス不要のウッドフェンス
瀟洒な日本建築を和モダンに演出する黒塀 日本家屋に馴染むすっきりとした黒のウッドフェンス 都営新宿線・篠崎駅から1kmほどの住宅街にシックな黒塀が一際目立つ新築の日本家屋があります。施主の石井様は長年この場所に住んでいましたが、区画整理を理由にご自宅の建て替えを余儀なくされました。建て替えに伴い、造園を担当した庭師の木村氏に木塀を提案した経緯を伺いました。 「建築計画の段階で庭の施工をお願いされました。外構の話になり、施主様は当初アルミフェンスを考えておられました。せっかく庭をつくるのであれば、既製品では面白味がないので手作りしましょうと木製の塀を提案しました」。 施主様は木造の塀をつくる事に抵抗や不安がなかったのでしょうか? 「木塀の話をした時、木の傷みや腐れを気にされていました。使用する木材の強度や施工方法を詳しく説明して、ご納得頂きました。最初は建物の雰囲気に合わせて、和風の竹垣(たけがき)を考えましたが、強風にあおられると倒壊する恐れがあるため、風を和らげる効果を持つ大和塀を選択しました。塀のサンプル写真を見せて提案した所、すぐにOKが出ました」。 株式会社木村グリーンガーデナー代表取締役木村博明氏 整然とした庭が素敵なエントランス
少しだけ人の気配が感じられるウッドフェンスに隠された機能 ミニマルな庭にシンボルツリーの大木と黒塀がマッチしている 創業50年迎える株式会社木村グリーンガーデナー。代表取締役の木村氏は、庭師の2代目として洋風の庭やガーデニングを行う傍ら、ガーデニング関連の雑誌連載やテレビ出演、講演活動をされています。木村氏に大和塀の説明とその使用材について語って頂きました。 「板を面で貼る方法もありますが、大和塀は交互に貼ることによって隙間ができ、この隙間から風が抜けるため、板塀の中でも長持ちすると言われています。板の間の空間は4センチ。内外で両端1センチずつ板を被せているので、正面から見えません。斜めから見ると少し中が見えるようになっており、いくらか人の気配を感じられるくらいの目隠し塀となっています。川が近く、たまに強風が吹く立地条件を考慮し、板を厚くして強度を高めました」。 使用した木材については、「フェンスの木材は飫肥杉の赤身材、ObiRED(オビレッド)を使用しました。 腐れに強く、耐久性が優れています。無垢材の表面に防腐効果のある塗料を木目が出るよう塗り、その上にBAN-ZI ALL WOODとシリコーン系塗料で撥水効果のあるスーパーCXを混ぜ、1度塗りしました。黒を選び、日本古来から愛されている黒塀をイメージしました」。 正面に立つと中が見えないため、プライバシーが保たれる。 風を和らげながらも目隠し効果のある大和塀
重厚感のある大和塀に合う御影石の石垣 シックな黒塀に負けない存在感のある石垣 ウッドフェンスを支える土台。よく見かけるのはブロックやコンクリートですが、そこへ石を貼り付け、石垣風にアレンジしている土台はあまり見かけません。その理由を庭のトータルデザインを行った木村氏にお聞きしました。 「ブロックのままだと大和塀との相性がよくないので、ブロックに大和塀と土台も映えるように御影石を貼りました。この石板は御影石の背板と呼ばれる、原石をカットした端材ですね。茨城の採石場で仕入れました。物によって厚さが違うので、貼るとデコボコしている所が面白いですね。陰影が出る効果もあります。家側はブロック表面をジョリパット(外壁用塗材)で仕上げています」。 ウッドフェンス工事で配慮した点を伺うと、「土台と大和塀のバランスを一番に考えました。施主様から歩行者が気になるとの要望を踏まえて、フェンスの高さは人の身長1800mmにしました。完全に見えないのも防犯上良くないので、隙間から気配を若干感じられる大和塀が最適だと思いました」。 施主様の希望を叶えながらも、防犯面など機能としての塀の役割を考えた庭師ならではのアイデアが施されていました。 陰影という副産物を産んだ御影石の背板 塀の高さは人の身長に合わせて設計
施主の希望を叶えたメンテナンス不要のウッドフェンス 昨年末に庭が完成した石井邸。ウッドフェンスの維持管理について木村氏は、「メンテナンスは基本的に考えていません。コート剤が木板に浸透して固まっており、雨が染み込まない仕組みになっています。そのため、保護塗料は再塗装できません。今後年月が経ち、板に水が染み込むようになった時は、コート剤を上塗りすることをオススメします。他の現場でも同様のコート剤を使い、2年経過しましたが木の反りや変形は全く見られていませんね」。 プライバシーを保ちつつ、強風対策も兼ね備えるという施主のリクエストに答えた大和塀。古式ゆかしいウッドフェンスが住環境をより豊かに変えました。
Story 建物自体が木造建築と三重県産材の教材となる林業・木材業界の人材を育成する「みえ森林・林業アカデミー」棟 床面をDLTデッキにした朝霞たちばな幼稚園の大型木製遊具と木の塀万全の腐朽対策を施しパネル化により工期も短縮 既存建築物への外構・外装木質化を実証実験外壁木質化工法や耐候性、人々の心理などを幅広く検証 宮崎杉大径木の黒心材の新しい用途を提案・検証する「ひむかブラックシダープロジェクト」 おすすめ記事 はじめてのウッドフェンス&ウッドデッキのメンテナンス 木を使うことで、日本の自然と社会が豊かになる。子供たちへのメッセージ カテゴリー SDGs エクステリア 木の家 木の街づくり タグ ウッドデッキ ウッドフェンス オフィスビル グランピング 開発秘話 学校・保育園 古民家 公園 公共スペース 雑誌掲載 対談 木の家具 木の雑貨 木の中高層建築物 木造住宅 遊具 エリア 北海道・東北地方 関東地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 九州地方