築100年以上の古民家。生け垣をウッドフェンスにリニューアル!大阪府南河内地域に位置する大阪府の唯一の村、千早赤阪村。金剛山や棚田など名所もある自然豊かな村落です。南海電鉄三日市町駅から車で15分程の山の麓に築100年以上の古民家があります。昨年10月に生け垣をウッドフェンスにリニューアルした施主の中村えいこ様と施工会社の株式会社阪本工務店・代表取締役阪本茂臣氏にお話を伺いました。 目次 敷地面積1.4ヘクタールを囲う生け垣を改修する大規模プロジェクト素材感が感じられる無垢材をつかったウッドフェンス一級建築士が考えた、控え材による倒壊防止策仕事場の機能を拡張。この場所を様々なアーティストに開放したい
敷地面積1.4ヘクタールを囲う生け垣を改修する大規模プロジェクト 広大な敷地を包むウッドフェンスと古民家 山沿いの閑静な住宅地に1.4ヘクタールの広大な敷地を持つ築100年以上の古民家。周囲には無垢材のウッドフェンスが設置され、地域の自然に調和しています。施主の中村様は鹿児島県で自然循環型農業を営む傍ら、レストランやデイサービスなど様々な事業を展開されています。木塀にする前、こちらには生け垣があったそうです。今回、生け垣から木塀に変更した経緯を伺いました。 「私たちが住む前から生け垣がありました。緑豊かな所が気に入って住んでいますが、生け垣だと近隣との境界が曖昧だったため、どうにかしたいと思っていました。知り合いの建築会社から施工会社の阪本さんを紹介して頂き、塀の相談に乗って頂きました。その後、阪本さんと話し合いを重ね、木製の塀に作り変えようと思いました」。 木製の塀に対して、不安はなかったと言う中村さん。木の魅力についてを問うと、「私は農業を行っていますが、以前から環境について考えていました。木は土に還る所がいいですね。鹿児島にある本社も木造で作られていて、非常に落ち着きます。住環境や仕事場の環境は大切だと思っています。フェンスをつくるなら木製がいいと阪本さんにお願いしました」。 施主 中村えいこ様 竹林に囲まれた広々とした庭
素材感が感じられる無垢材をつかったウッドフェンス 木目が美しい無垢材のウッドフェンス 大阪富田林の地で60年の歴史を持つ一級建築士事務所、株式会社阪本工務店。2代目となる代表取締役阪本氏に、今回のウッドフェンス工事についてお聞きしました。 「フェンスに使用した木材は、京都綴喜(つづき)の材木屋から仕入れました。京都の材は、強度を示す曲げヤング係数が一般の木材より数値が高いため、木製のフェンスに最適だと思いました。スギ材にAZNと呼ばれる防腐・防蟻処理剤を乾式加圧注入し、AQ認証1種(JAS性能区分K4相当)を獲得しました。乾式加圧注入は、木材の色の変化が少なく、自然の風合いが出ることが魅力。割れやねじれが少ないのもいいですね。施主さんが無垢材を希望されていましたので、無塗装で仕上げ、カット面にだけサンプレザー(保護材)を塗布しました」。 作業エリアが広範囲で、しかも急斜面も多い今回のプロジェクト。作業が大変だったことは想像に難くない。 「高低差5mある条件下のため、急斜面のフェンスを設置する施工が大変でした。この場所に関しては、図面に頼らずに現場合わせで乗り切りました。大工さんの腕が一番試される所ですね。フェンスの全長が270mあるため、材料の運搬も苦労しました」。 株式会社阪本工務店・代表取締役阪本茂臣氏 急斜面に建てられた高低差4mのウッドフェンス
一級建築士が考えた、控え材による倒壊防止策 高台にある古民家から望むウッドフェンスに囲まれた広い庭 広大な敷地を囲むウッドフェンス。こちらは通常のフェンスと異なり、支柱や控え材がしっかりとした印象があります。その意図を一級建築士でもある阪本氏に語って頂きました。 「山から吹き下ろす風に耐えるため、横板の隙間を20mm開け、さらに1300mmピッチ(間隔)でアルミの支柱を配置し、板材で挟み込みました。さらに、2600mmピッチでアルミの控え材を斜めに入れて、補強しました。施主さんが自然物、天然木にこだわられていましたが、土台や支柱がしっかりしていないとフェンス倒壊の恐れがあります。ここは説明して納得して頂きました」。 フェンスを支える控え材には、古民家に住まわれている施主様の希望を叶えつつ、見た目だけではなく堅牢なつくりに志向した一級建築士による計算に裏打ちされた工夫が凝らされていました。 45度に設置されたアルミの控え材
仕事場の機能を拡張。この場所を様々なアーティストに開放したい 写真右 横井愼治氏 関西のビジネス拠点でありながらも、社員寮を兼ねている古民家。生け垣からウッドフェンスにリニューアルした広大な景色を見た中村様は、「フェンスを建てることによって、敷地の範囲が明確になりました。自然の物が好きなので、やっぱり木製のフェンスにして良かったと思います。今後は、この場所で芸術家を招聘するアーティスト・イン・レジデンスを展開したいと思っています」と未来の構想を語られていました。 阪本氏は、「無垢材は経年変化が楽しめます。今後は定期的に顔を出し、塗装の必要がないかを点検したいと思っています。自然環境に優しい防腐剤や塗料もありますので、必要があれば提案させて頂きます」。 ウッドフェンスを取り入れたことにより、曖昧だった近隣との境界が現れました。取材後、アーティストを招き入れるアトリエスペースやスタジオを見学させて頂くと、内装工事が着々と進んでいました。社員寮に留まらない施主の中村様が考える「仕事場」は、新たなスペースへと生まれ変わります。
Story 建物自体が木造建築と三重県産材の教材となる林業・木材業界の人材を育成する「みえ森林・林業アカデミー」棟 床面をDLTデッキにした朝霞たちばな幼稚園の大型木製遊具と木の塀万全の腐朽対策を施しパネル化により工期も短縮 既存建築物への外構・外装木質化を実証実験外壁木質化工法や耐候性、人々の心理などを幅広く検証 宮崎杉大径木の黒心材の新しい用途を提案・検証する「ひむかブラックシダープロジェクト」 おすすめ記事 はじめてのウッドフェンス&ウッドデッキのメンテナンス 木を使うことで、日本の自然と社会が豊かになる。子供たちへのメッセージ カテゴリー SDGs エクステリア 木の家 木の街づくり タグ ウッドデッキ ウッドフェンス オフィスビル グランピング 開発秘話 学校・保育園 古民家 公園 公共スペース 雑誌掲載 対談 木の家具 木の雑貨 木の中高層建築物 木造住宅 遊具 エリア 北海道・東北地方 関東地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 九州地方