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- 伝統的な技法を採用、三重県産スギを使ったウッドフェンス
伝統的な技法を採用、
三重県産スギを使ったウッドフェンス
伊賀忍者や松尾芭蕉の故郷としても知られている伊賀市は、三重県の北西部に位置し、江戸時代は伊勢神宮に参拝する人の宿場町としても栄えました。あづま工務店は、この地で二代にわたって地元の「三重の木」にこだわった木造建築やリフォームの仕事をしています。今回は、新築したM様のお宅のウッドデッキに、新たにウッドフェンスを設置しました。設計・施工を担ったあづま工務店の東 秀充さんにお話を伺いました。
ウッドデッキに後からウッドフェンスを追加
小さな川の畔に建つM様邸
新設したウッドフェンスは、一年前に東さんが建てた住宅のウッドデッキの周りを囲うように設置してあります。「この家は、裏にお住まいになっている施主様が、息子さんご夫婦のために建てたものなんです。最初は、洗濯物干し場としてウッドデッキだけ作ったのですが、お子さまがまだ小さいのとプライバシーを守るために手すりと目隠しを兼ねた木の塀を追加でつくることになりました」。周辺はのどかな田園地帯で、目の前には小さな川が流れているとても清閑な環境です。「家の方は、木造2階建てで外壁の一部を濃いブルーの板金にしてモダンな印象にしました。木の外壁の部分は柿渋を塗っています。ちなみに先につくったウッドデッキも柿渋を塗っているんですよ」。
- あづま工務店の東さん
- ウッドフェンス設置前のM様邸(写真提供:あづま工務店)
三重県産のスギ材を使用
あづま工務店は、三重県材にこだわって住宅建設をしています。最近は古民家のリノベーションの依頼も多いようです。「50年前に父が創業して、私が二代目です。三重県の木にこだわった新築住宅を建てています。この家やウッドデッキ、ウッドフェンスもすべて三重の木を使っています。ウッドフェンスはスギ材を使っています。お付き合いがある三重県尾鷲の材木屋さんに調達を依頼しました。スギは材質が柔らかく、傷がつきやすいですが、温かみがあり手触りや足触りがとてもいい材です。鉋で削ってすぐ手で触ると、スギの柔らかさが実感できます。スギの芯材(赤身材)は、ヒノキよりも水に強いと聞いていたので、赤身材を集めてもらいました。土台と柱材、板の横木は薬剤を加圧注入してJAS性能区分K4相当の保存処理材にしています。板材は無垢材のまま使って保護塗料を二度塗りしています。板材の木口(こぐち)から雨水が浸み込むのを防ぐため手すり兼用の笠木を設置しています。笠木も板材と同様に保護塗料を二度塗りしました」。
木造ならではの伝統的な「込み栓」の技法を採用
フェンスの構造や施工上での配慮したポイントをお聞きしました。「基礎のブロックと塀の土台の間に住宅用パッキンを敷いています。土台と基礎はボルト締めです。ちょっとこだわったポイントとしては、塀の柱と土台の固定に『込み栓』※という伝統的な建築技術を使いました。釘をつかうよりしっかり固定でき、昔ながらの技法をアピールしたいという気持ちもありました」。施工で苦労した点をお聞きすると「敷地の関係で、塀を鋭角に合わせなければいけない場所があり、その部分の土台や横木を組み合わせるのに少し苦労しました」。
※込み栓:ホゾに穴を開け、堅い木(広葉樹)で作った栓を打ち込んで固定する伝統的な建築技術。
柱と土台は「込み栓」で固定
目隠し性と採光性を両立
正面からは外を見通せるが、少し斜めからは目隠しになる
意匠上で考慮した点をお聞きすると「まず家の雰囲気に合ったウッドフェンスにしようと思いました。外壁の板金が縦のストライプになっているので、それに合うように縦のラインを意識してデザインしました。板材は広い面を横に使うのではなく縦にスリット状にして、奥行きのある格子にしています。こうすることで正面に立つと景色が見えますが、少し斜めからは家の中を覗けなくしました。風もちゃんと抜け、光も入ってくるので閉鎖的にならず、プライバシーも守れるようにしています。また板を縦に使うことで雨水の切れもよくなり腐朽対策にもなると思います」。
傷んだ材は交換して長持ちさせる
家の外観とよくマッチしたデザイン
日頃のお手入れや今後のメンテナンスに関しては「普段のお手入れはホウキで汚れを掃く程度でいいと思っています。傷んでしまうと交換が効かない土台や柱、横木は耐久性の高い加圧注入材を採用しているので安心できると思います。板と笠木は木そのものの質感を生かすために木材保護塗料を塗布しただけです。雨に打たれる笠木は、傷んだら交換すればいいかな、と。笠木も板も交換しやすい造りにしてあります。
新しくできたウッドフェンスは、施主様やお住まいなってる方からの評判も上々のようです。「施主様が、近所の若い子から可愛いのができましたね!と言われたそうです。息子さんご夫婦も子どもを安心して遊ばせることができるので満足されているようでよかったです」。
ウッドフェンスを設置したことで、ウッドデッキの価値が高まり、1階リビングルームと一体化した空間として活用できそうです。