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- 長持ちさせる様々なアイディアを盛り込み 庭全体をウッドデッキに!
長持ちさせる様々なアイディアを盛り込み
庭全体をウッドデッキに!
熊本市内に住む佐藤圭一郎さんは数年前にご自宅を新築し、2021年11月に庭全体を覆う広いウッドデッキとウッドフェンスを設置しました。施主の佐藤さんと設計を担当した古川設計室の古川亮さん、施工を担当した榊工務店の榊良太さんにお話しをお伺いしました。
子どもたちが安心して遊べる場所に
伝統的な佇まいの家にマッチしたウッドフェンス
駐車スペースを除いて、庭全体をウッドデッキにされた熊本市の佐藤さんは、木材市場や製品市場、プレカット工場を持つ肥後木材株式会社の社長さんです。どのような思いでウッドフェンス、ウッドデッキをつくったのか、お話を伺いました。
「庭をウッドデッキにした理由の一つは子どもの遊び場をつくりたかったからです。コロナ禍ということもありますし、屋外で安心して遊べるスペースをつくってあげたかったんです。もう一つは、このあたりは野良猫が多くて庭に入ってきて困っていたのでその対策という意味もありました。駐車スペースを除いた庭全体をウッドデッキにして、その周りをウッドフェンスで囲いました。将来、二人の子どもが独立して家を出て行ったらウッドデッキを壊して庭づくりを始めてもいいかなと思っています。20年ぐらい先になると思いますが(笑)」。
施主の佐藤圭一郎さん
木は一本一本、すべて違う表情
ボール遊びができるほど、広々としたウッドデッキ
フェンスとデッキに国産スギ材を使った理由をお聞きしました。「私が木材の仕事をしているということもありますが、木をふんだんに使った家を建てたので、その外観に合ったものというと無垢の木以外には考えられませんでした。人工木の方がメンテナンスは楽ですが、バランスが悪くなると思います。天然素材である木は温かみがあって、他の建材と違って一つとして同じものがありません。木の質も違うし、木目や節の数などの表情もすべて違い、それが木のいちばんの魅力だと思います。工業製品なら見た目も性質も同じにできますが、すべてが違っている方が自然です。子どもを育てていく環境としては、木の空間はとてもいい環境だと思います。一方、木のデメリットとして劣化することがあげられます。木材は生きているので反ったり、割れが入ったり、汚れたり、傷が付いたりします。何年かに一度は保護塗料の塗り直しなど、メンテナンスが必要です」。
幅210mm、厚さ45mm、長さ4mのスギ板を使用
デッキを長持ちさせる様々な工夫
幅と厚みがある板材は、木裏を上にして使用(写真提供:佐藤圭一郎さん)
使用された木材についてお聞きすると「親戚が製材所をやっているので、そこに依頼しました。フェンスもデッキも国産スギ材で、とくに芯材(赤身)の部分を使っています。ヒノキよりもスギの赤身の方が水に強く耐候性があると思っているので、スギの赤身材がどれくらい持つか実際に試してみたいという気持ちもありました。デッキの板材には、薬剤加圧注入をしない代わりに撥水性の高い木材用保護塗料を表面に塗布しています。一方、束柱や大引きには“エコアコールウッド”という防腐・防蟻効果のある薬剤を加圧注入し、AQ1種相当の耐久性を確保しています。さらに、木材を腐朽から守るために大引き※1の上面を板金でカバーして水の侵入を防ぐ工夫をしました。束柱や大引きは交換するのが困難ですが、板は傷んだら、板ごと交換すればいいと思っています。また、デッキの板は通常、木表※2を上にして使いますが、今回は木裏※2を上にしてます。幅の広い板を使っているので、反った際に上面が凹ではなく凸になるようにして板の上になるべく水が貯まらないようにしました。木裏でつかうとササクレの心配があるのですが、それよりも水が貯まらない方を優先しました」。
※1 大引き(オオビキ):デッキ面を支える梁
※2 木表(キオモテ)・木裏(キウラ):製材したときに丸太の外側にあたる面が木表、内側(芯の方)に当たる面が木裏
黒く見えるのが板金のカバー(写真提供:佐藤圭一郎さん)
伝統的な家屋の佇まいに合わせたデザイン
ウッドフェンスとウッドデッキを設計したのは、家の設計も担当した古川さんです。構造や意匠上で工夫されたポイントをお聞きしました。「庭の土壌が砂利質だったので、基礎に束石を置きその上に束柱を立て大引きを乗せています。束柱、大引きは、佐藤さんが説明したように板金でカバーして雨水などを避けるようにしています。デッキの天板の間隔は少し広めにしてあり、風が通りやすいように配慮しました。フェンスの柱は耐久性や強度を考えて金属製のものを使っています。木口から水が入りやすいので笠木を横に張って雨水を避けるようにしました。また、フェンスの板は縦張りにして、水が切れやすいようにしています。デッキもフェンスも腐りやすい部分は交換しやすい構造にしてあります。交換が難しい部分は、薬剤を加圧注入した材を使い長持ちするようにしました。意匠上では、家が伝統構法で建て、外壁は真壁※にしていて水平材・垂直材が見えているので、それに合わせ水平・垂直で構成したデザインにしています」。
※真壁(しんかべ):伝統家屋に見られる、柱を露出させた壁。
家族の憩いの場になる木の空間
施工を担当した榊さんは「最初に図面を渡された時は大きくてびっくりしました。これだけ大きなウッドデッキをつくるのは初めてす。施工で苦労したのは板を固定する釘やビスが上から見えないように、下から止めたことですね。足に釘やビスが触れないので怪我をする心配がないし、雨水も浸み込みづらくなります。工期はデッキで2週間、フェンスで1週間ほどでした。木は一本一本、性質が違うので、材をよく見て、曲がりなどを見ながらこの板はどこに使おうかと考えながら作業を進めます。それが大変な点でもあるし、面白い点でもあります」と話してくれました。
最後に佐藤さんに今後どのようにデッキを活用していきたいかをお聞きしました。「子どもたちは、遊び場ができてとても喜んでいます。夏になったらビニールプールを置いてもいいかなと思っています。家族の憩いの場としていろいろ活用できそうです。コロナの状況が落ち着いたら友人たちを呼んでバーベキューをしたいですね」。
長持ちさせることに配慮してつくったウッドフェンスとウッドデッキ。これからも子どもたちの遊び場となって家族の成長を見守っていくことでしょう。