南九州大学環境園芸学部環境園芸学科講師
宮崎県都城市在住
海外の日本庭園、市民のための日本庭園について、歴史、魅力発見と発信などをテーマに研究。大学では庭園史、庭園デザイン、管理、実習などの講義を担当。所属:日本造園学会、日本庭園学会、North American Japanese Garden Association(北米日本庭園協会)、日本メディカルハーブ協会
樹木の根元の小さな空間に神聖を見出す繊細な感性
「倭(やまと)の国の真(ま)秀(ほ)ろば 畳(たたな)づく青垣 山籠れる 倭(やまと)うるわしき」
と古事記に日本の景色の美しさが詠まれています。
日本人は古来よりアニミズ、生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方、自然界のそれぞれのものに固有の霊が宿るという考え方があります。
巨石や巨木にしめ縄をかけたり、今もそういう光景が見られます。
立磐神社(宮崎県日向市)の御神木
「隔てつつ融合する」世界がうらやむ日本の美学
自然が身近にある、美しい自然とともに営んできた日本の庭、日本の景観、それは今や世界に誇るものとなっています。
日本の美的センスは、西洋式庭園(整形式庭園)とは異なります。そこには建物と外部空間を繋ぐ縁側があり、その先には安全・安心に過ごすために塀があります。
「隔てつつ融合する」がうまくデザインされています。自然素材が使われ細かいところにまで気配りされ、美しい空間が成立しています。
ブロック塀から板塀へ。景観整備により文化的価値を最大に 秋田県仙北市角館
秋田県仙北市角館にある武家屋敷群は、日本で最初の重要伝統的建造物群保存地区に選定された町並みのひとつです。ここはかつてブロック塀だったそうですが、景観整備として板塀に変えています。江戸時代からある建物と庭園、シダレザクラやモミの大木、それらの内部空間と外部を隔てつつ融合させて、美しい景を創り出しています。
庭、景・・・樹木や景石など自然を身近に配し、四季折々の風情を感じる、日本らしい内と外とをつなぐ空間が、私たちに今必要な心のうるおいと繊細な感性を、取り戻してくれるのではないでしょうか。