Story 子どもたちがのびのびと遊べる耐久性、安全性の高い「サイボクの森」の木製の遊具
子どもたちがのびのびと遊べる 耐久性、安全性の高い「サイボクの森」の木製の遊具 埼玉県日高市にある「サイボク」は、食肉加工メーカーの株式会社埼玉種畜牧場(通称、サイボク)が運営している食と健康と通した“豚のテーマパーク”です。その中に2019年9月に開園した10種の木製アスレチック遊具を備えた「サイボクの森」があります。サイボク企画・広報課の沼崎さんと木製遊具の設計・施工を行ったザイエンスの千脇さんに開園から2年以上経過した木製の遊具の状態についてお聞きしました。
思わず触れてみたくなる木製の遊具 広々とした芝生の広場には10種の木製の遊具が!
平日にもかかわらず、サイボクの森には、たくさんの親子が訪れていました。サイボク 企画・広報課の沼崎政和さんにサイボクの森に木製の遊具を設置された経緯をお聞きしました。
「当社の正式な会社名は株式会社埼玉種畜牧場といいます。1946年の創業で、最初は養豚事業に専念していましたが、その後、豚肉の販売、ハム・ソーセージの加工を始め、今ではレストランやショップ、天然温泉施設、そして2019年には『サイボクの森』というアスレチックをつくり、食と健康を通じた『豚のテーマパーク』ということで運営しています。サイボクの森がある場所はもともとパークゴルフ場で、木立も多く、その自然景観には木製の遊具がマッチするだろうと当社の女性社員のアイデアから導入しました。木製の遊具は、一般の公園で見られる樹脂や金属の遊具より夏は熱くなり過ぎず、冬は冷たくなり過ぎません。また木製の遊具には子どもたちを惹きつける力があるようで、思わず触って遊んでみたくなる、とお客様の評判も上々です」。
木が腐る要素を取り除き長寿命化を実現 大人も子どもと一緒に遊べる遊具もあります
サイボクの森の遊具、ベンチを設計、製造、施工、保守点検を担当しているのは株式会社ザイエンスです。ザイエンス社は、木材保存処理技術を生かして建築材料や公園資材を製造しています。マネジャー千脇義一さんへ木製施設を長持ちさせるための配慮についてお聞きしました。
「木材の腐朽する要因は4つあります。水、栄養、温度、酸素の4つの要素が揃ってはじめて木材は腐朽します。逆にこの一つでも制御できれば木材は腐りません。弊社では、この要素の中で、水と栄養をコントロールすることに努めてきました。腐朽菌が木材を栄養源として繁殖することを防ぐために、使用する木材は木材保存剤が浸潤しやすい国産杉材を利用し、日本工業規格(JIS K 1570)に該当する木材保存剤ペンタキュアECO30をAQ1種(JAS K4相当)の性能区分で処理しました。さらに、柱の地際や頭部は雨水が滞留しやすく腐朽しやすい部位のため、金属を利用して保護しました。柱の地際から地面に埋まる部位へは鋼管を利用し、木部が直接土に触れないようにしました。この方法は、鋼材と木部を固定しているボルトを外すことで、柱だけの交換ができ、これからのメンテナンスを考慮した設計にもしています。また柱の頭部へは金属プレートを取り付け、雨水が浸み込みづらくしました。水と栄養の要素を取り除くことで木材の長寿命化を図りました。」
柱の地際は鋼管で覆い、頭部には金属製のキャップを装着
安全・安心のために施した様々な工夫 子どもが触れる部分は芯去材(右上)、構造材には芯持材(左下)を使用
たくさんの子どもたちが使う木製の遊具には高い安全性が求められています。子どもたちが安心・安全に遊ぶために配慮している点についてお聞きしました。
「木製遊具で気を付ける点として、ササクレがあります。ササクレは、木材の割れや経年劣化で発生する木材の特徴で避けることはできません。ただし子どもが手で触る部位へ割れが発生しづらいようにすることは可能です。芯を持った木材『芯持材』は、乾燥収縮の異方性と乾燥過程における表層と内部の水分傾斜によって芯割れが生じますが、芯がない木材『芯去材』は芯割れが少なく、割れによるササクレが発生しづらいです。『芯去材』は『芯持材』よりも3倍くらいの丸太から製材するため、『芯去材』は子どもが握るΦ120㎜以下の部位へ使用し、その他の構造材は『芯持材』としました。芯割れは部位によって、子どもの指が入るくらいの大きな割れになる場合があります。割れへ指を挟み込み抜けなくなることがないよう保守点検の際にコーキング等で埋めるようにしています。また樹木が成長する過程で、年輪の色の薄い部分を『早材』、色の濃い部分を『晩材』と呼びますが、春から夏に成長した『早材』は、夏から秋にかけて成長する『晩材』に比べて軟らかく使用頻度によっては早材部が先に摩耗し凹凸になります。サイボクの森の木製遊具は、設置から2年経ちましたが、利用者が多いということもあり、都市公園で使用している木製遊具よりも数倍の早さで凹凸が発生していました。放っておくと凸の部分(晩材部)がササクレやトゲになることがあるので、電動サンダーなどで 平滑にしてメンテナンスを行っています。」。
※ 丸太の中心(芯)が含まれるように製材した木材を「芯持材」、中心を外して製材した木材を「芯去材」と呼びます。「芯去材」の方が、芯割れが発生しづらいです。
しっかりメンテナンスすれば木は長持ちする やわらかい早材の部分の方が早く摩耗して凸凹に
ザイエンス社は10年間のメンテナンス計画書を作成し、管理側による日々の目視点検の他、1年に1回の定期点検を実施し、日常点検では分からない部分もしっかり点検しています。
「開園から2年以上経ち、ササクレの除去や割れ部へのコーキング処理などは行いましたが部材交換など大きな修繕は行っていません。ただし子どもたちが触ったり、足で踏みつけたりする部分の塗装は剥げてしまっています。木材保存剤を加圧注入処理しているので、それ自体の耐用年数は塗装なしでも15~20年程度は見込めますが、塗装は木部への撥水効果があることや細かいササクレの発生を予防するということ、美観を維持するということからも定期的な塗装をおすすめしています。今後はロープやチェーンなどの消耗品の交換や木部への塗装などを行い長く使って頂けるようメンテナンスをしていきたいと思います。」。 千脇さんは、メンテナンスさえしっかり行えば木は長持ちするとおっしゃいます。
木製の遊具が若い子育て世代を惹きつける サイボクの沼崎さん(左)とザイエンスの千脇さん(右)
2020年度のサイボクの森の年間来場者は83,000人(ただしコロナ禍で4/16~5/末まで休園)。サイボクの森ができてから若い年代層の親子が増えてきたと沼崎さんはおっしゃいます。
「それまでは高級食材や健康を意識される40代後半のお客様が多かったのですが、サイボクの森がオープンしてからは、若いお父さん、お母さんたちがお子さんを連れてお見えになるようになりました。親御さんの目が届く広さで、木の温もりを感じる遊具のおかげかなと思っています。健康とは健やかな身体と安らかな心が揃って実現できるものだと思います。これからもサイボクの森の木のアスレチック遊具で大人も子どもも元気よく遊んでいただけたらと思います」。
また、サイボクでは、今後も木の遊具を増やす計画があり、現在予算等の詰め作業に入っています。何ができるのか沼崎さんにこっそり教えていただきました。「今、計画しているのは、よちよち歩きのお子さんでも楽しく遊べるようなものです。高さもあまり高くなく、中でおままごとをできるようなものを考えています。順調に進めば来春にはお目見えするので、ぜひサイボクの森まで遊びに来てください」。