地域の人に愛される場所になった県産材を使ったウッドフェンス、ウッドデッキ以前、Storyで取材をさせていただいた宮崎市清武町にある(有)河野俊郎酒店さんに再びお訪ねしました。店舗を移転・新築した際に設置したウッドフェンスとウッドデッキには、どんな変化があったでしょう。施主の河野俊郎さんと、設計・施工を行った西尾組の西尾武彦さんにお話をお伺いました。 目次 緑豊かな清武町の景観に溶け込む建築ウッドフェンスには意外な集客効果があった20年は持たせるつもりで設計・施工高耐候性の木材採用でメンテナンス軽減化を目指す地域の人たちの集いの場にもなったウッドデッキ
緑豊かな清武町の景観に溶け込む建築 県産材をふんだんに使用した2階のコミュニティスペース 河野家は、昭和3年から清武町内で代々酒屋を経営されていて、今のご主人である河野俊郎さんが三代目にあたります。2019年に現在の場所に移転し、その際に今まで別の場所にあった奥様が経営されている和菓子店「河野文華堂」も同じ建屋に移転。お酒(辛党)とお菓子(甘党)というおもしろい組合せのお店になっています。 河野さんが宮崎県産材で新しい店舗をつくろうとしたきっかけは、羊羹で有名な虎屋の「とらや工房」(静岡県御殿場市)でした。「風景の中に溶け込んでいる、御殿場のとらや工房さんの木造建築を見て、自分も新しいお店をつくるなら、清武の美しい風景に溶け込むような建物にしたいと思いました。もちろん木を使うことが自然環境を守り育てるために役立つということも頭の中にありました」。 何故、ウッドフェンス、ウッドデッキを設置したのかをお聞きすると「木にすることで店舗全体の景観が、より自然に溶け込むと考えたんです。鉄のフェンスでは、自分のイメージとは違うなと思いました。ウッドデッキは、建物にアクセントをつけるのが目的です。もちろん、デッキでお茶を飲んだり、人が集まったりすることも考えていました。そんな私のイメージを、木の建築に詳しい西尾組の西尾社長に伝えて、設計が決まっていきました」。
ウッドフェンスには意外な集客効果があった 県産材を使用したパーゴラは人気の撮影スポット 完成してから丸2年が経過した建物やウッドフェンスの感想をお聞きすると「はい、イメージ通りです。木の色合いやぬくもりには、リラックス効果があるのを感じます。お客様もお店に入ってこられると最初に木の香りを感じて、おやっ!という表情をされます。ウッドフェンスも道路を走る車からよく見えるので、通る方が何だろう?と思って駐車場に車を停め、お店に入ってくることもよくあります。思わぬ集客効果がありました。入口の塀沿いには木のパーゴラを建てたのですが、これは私が店舗全体を眺めるのにいちばんいいアングルの場所に設置したんです。そうしたら最近はお店に来られた奥様たちがパーゴラからお店の写真を撮ったり、塀とパーゴラをバックに記念写真を撮ったり、インスタ映えスポットになっているんですよ」と最近のエピソードを紹介してくださいました。 竣工時
普段のメンテナンスや補修についてお聞きすると「実はとくに何もしていないんです。デッキの上の植木鉢の位置をときどき変える程度です。3年目に入って、塀やデッキは色合いが落ち着いたグレーに変わってきました。古い神社の建物のような色合いで、とても気に入っています。年と共にそれなりの顔ができてきて、私たちと一緒に年を重ねてきている、そんな味わいが出てきました。今後のメンテナンスについては、私も気になっているところなので今日は西尾社長がいらっしゃるので、ぜひお聞きしたいと思っていました」。 施主の河野俊郎さん(左)と設計・施工をした西尾組の西尾武彦さん(右)
20年は持たせるつもりで設計・施工 丸2年が経過しシックな色調に変化したウッドフェンス 建物や塀の設計施工をした株式会社 西尾組は各種建物の設計・施工の他、「曳き家」(ひきや)という建物を解体することなくそのままの状態で移転させる技術を持っている会社です。河野俊郎酒店の建屋とウッドフェンス、デッキの建築に携わった社長の西尾武彦さんに、ウッドフェンスをつくるときにいちばん配慮されたことをお聞きしました。 「建物との調和ですね。建物が和風なイメージを持つので、塀も昔からある縦板張りのデザインにしました。宮崎県産の杉板を乾燥させ、薬剤を加圧注入したJAS性能区分でいうK4材を採用しています。厚さも将来的に表面が劣化してもボロボロにならないよう15㎜にしています。塀の土台はコンクリートで木部が地中に埋まることはないので、K4注入材以外特に配慮はしていません。デッキの方はK4注入材と同等かそれ以上の耐候性がある酸化亜鉛含浸処理をした宮崎県産の杉板をつかっています。今日、久しぶりに塀やデッキを点検しましたが、どこも傷んでいません。20年ぐらいは持たせるつもりでつくりましたから」と笑って話してくださいました。
高耐候性の木材採用でメンテナンス軽減化を目指す 建屋の壁の色と調和がとれてきたウッドデッキ さらにメンテナンスについてお聞きすると「当初からメンテナンスを軽減できるようにK4注入材を採用しました。表面を塗装すると7、8年で塗装が剥げてきて再塗装が必要になるので、あえて塗装はしていません。今日見たところでは、まだ手を入れなくて大丈夫です。今後、メンテナンスを行うとしたら自然素材の塗料を塗る程度でいいと思います。もし部分的に傷むところがあったら、その部分だけ板を張り替えます。設計段階から傷んだ板の交換は考慮していて、取り換えやすい寸法の板材をつかっているんです。板の末端や柱の小口が上に出ている部分は傷みやすいので注意して見ています」。最後に補修はDIYでできるかどうかを聞いてみました。「木は加工しやすい素材なので、できないことはないと思いますが、工具をちゃんと使いこなせないと難しいかもしれませんね。その人のスキル次第というところです」との答えでした。 竣工時 賑わうマルシェの様子 イラストレーター yu-popさんの投稿より
地域の人たちの集いの場にもなったウッドデッキ 地域のヨガ教室の朝ヨガ練習場に使われている 河野さんは、「建屋の2階はコミュニティスペースとして地域の人が集える場として活用しています」と話します。いまはコロナの影響で実施できずにいますが、一昨年は、ピアノコンサートや日本酒試飲会、地域の人が集うマルシェなどさまざまなイベントを開催し、地域の人たちも利用する場となっています。ウッドデッキには、地域でヨガ教室を開いている方から「朝ヨガ」の場所に貸してくださいと依頼があったそうです。「ヨガの先生から、気持ちがいいスペースなのでぜひ貸してくださいと言われてお貸ししています。朝の6時半から皆さんが集まってデッキの上でヨガをされています。木は温もりがあるし感触もやわらかいので、いいのでしょうね。お客さんの方がいろいろ使い方を考えてくれて、おもしろいなと思います」。竣工当時の木の色から、経年変化で落ち着いたグレーのトーンに変わりつつあるウッドフェンス、ウッドデッキは清武の自然や人々の暮らしに柔らかく溶け込んでいるようでした。 竣工時
施主様:有限会社 河野俊郎酒店 http://www.kawanosaketen.com/ 工務店様:株式会社 西尾組 https://nishiogumi.co.jp/ ※人物写真は、撮影時のみマスクを外して撮影しています。
Story 建物自体が木造建築と三重県産材の教材となる林業・木材業界の人材を育成する「みえ森林・林業アカデミー」棟 床面をDLTデッキにした朝霞たちばな幼稚園の大型木製遊具と木の塀万全の腐朽対策を施しパネル化により工期も短縮 既存建築物への外構・外装木質化を実証実験外壁木質化工法や耐候性、人々の心理などを幅広く検証 宮崎杉大径木の黒心材の新しい用途を提案・検証する「ひむかブラックシダープロジェクト」 おすすめ記事 はじめてのウッドフェンス&ウッドデッキのメンテナンス 木を使うことで、日本の自然と社会が豊かになる。子供たちへのメッセージ カテゴリー SDGs エクステリア 木の家 木の街づくり タグ ウッドデッキ ウッドフェンス オフィスビル グランピング 開発秘話 学校・保育園 古民家 公園 公共スペース 雑誌掲載 対談 木の家具 木の雑貨 木の中高層建築物 木造住宅 遊具 エリア 北海道・東北地方 関東地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 九州地方