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木のストローが、木材活用のきっかけや地域の活性化に貢献

環境の分野では、海洋プラスチック問題が大きく取り上げられています。スーパーやコンビニでレジ袋が有料になったのも記憶に新しい出来事。そんな中で木のストローがいま話題を呼んでいます。木におきかえることで森林資源の活用につながり、ひいてはSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献します。今回はWEBや動画撮影、商品デザインの制作会社でありながら、木のストローをはじめ数々の木製品のデザイン・製造・販売を行っている株式会社クレコ・ラボの代表取締役/ディレクターの興津世禄氏にお話をうかがいました。

クリエイティブの力で環境課題を解決し、SDGsに取り組む

社名の「クレコ」は「クリエイティブ」と「エコロジー」をかけ合わせた造語です。
資源に乏しい日本のエネルギー問題を考えたときに、廃棄物を利用できれば解決できるのではと考え、大学では廃棄物発電に関する研究室に所属していました。卒業後はシンクタンクなどで再生エネルギーやリサイクル関連のプロジェクトに従事。最初は、環境よりエネルギーに関心があったんです。ところが、廃棄物の利用ってなかなか難しいんです。そこで起業するときにいろいろ考え、日本は森林資源には恵まれていることに気づいたんです。しかし、その森林資源がうまく活用できていない。これをテーマにしてビジネスに展開できないかな、と考えました。いろいろ調べてみると、木材が売れないのは、需要が減少しているから。木を売るためには、需要づくりが重要でした。そこで、クリエイティブの力で付加価値を上げた木の商品をつくり、需要を創出するというコンセプトで事業を立ち上げました。木材需要を創出することでSDGsの達成にも貢献できると思います。
平面から立体を作るというコンセプトで考案した「木の紙スナップ」平面から立体を作るというコンセプトで考案した「木の紙スナップ」

木材の利用促進は、需要づくりから

「木の紙」は厚さ0.1㎜以下にまで薄くスライスした木からつくられます。「木の紙」は厚さ0.1㎜以下にまで薄くスライスした木からつくられます。
2008年に創業した当時は、一般のデザイン制作やWEBの仕事などをしながら、木の商品デザイン開発をしていました。身の回りを見みると、普段使っているもので木の製品って少ないんです。だから生活の中で消費されているものを木の製品に置き換えることができたら、木の利用促進につながると考えて生まれたのが「木の紙」。木を薄くスライスする技術はすでに存在していて、スライスした木は壁に貼りつけるなどして利用されていました。この技術を雑貨系に応用できないかと試行錯誤を繰り返し、プリンターで印刷できる「木の紙」「木の名刺」などを商品化しました。紙も原料は木ですが、木肌が目に見えることでビジュアル的に強く訴えることができます。名刺は、他の人に手渡すものなので、こんなところにも木を使えるということを広めていくこともできます。木材利用のきっかけや気づきを与えるアイテムとしても役立てるのが狙いです。
「木の紙」の原料になる厚さ0.1mm以下にスライスした木材「木の紙」の原料になる厚さ0.1mm以下にスライスした木材

日本全国の木材を使った木のストローを開発

極薄にスライスした木材を独自の巻き上げ加工で仕上げる「木のストロー」極薄にスライスした木材を独自の巻き上げ加工で仕上げる「木のストロー」
木のストローは、ある企業から相談を受けて開発に着手しました。開発の背景には、世界的な脱プラスチックの流れがあります。また、ストローは企業から一般消費者まで、誰もが使うものなのでたくさんの人にリーチできるのが利点です。さらに、ストローは水と接点があるものです。森は水を生み出す源でもあるので、その水を森の資源である木のストローで飲むということにストーリー性がありコミュニケーションツールとしても面白いと感じ、当社の定番商品として取り扱うことにしました。最初は秋田県産のスギで作っていたのですが、各地の森の木を使い、その土地の森と木と水のつながりを感じてもらえたらと考え、現在では、日本各地8カ所の木を材料に製作を進めています。

北海道 トドマツ(シラカバもテスト中)
青森 ヒバ
茨木 ヒノキ
東京 多摩産材のヒノキ
大阪 スギ
富山 氷見産材のスギ
鳥取 智頭産材のスギ
愛媛 ヒノキ

この他に沖縄県庁とリュウキュウマツ、イタジイ、ウラジロエノキを使った木のストローの開発を進めています。
木のストローは使用後、洗ってよく乾かせば繰り返し使えます木のストローは使用後、洗ってよく乾かせば繰り返し使えます

クラウドファンディングをプロモーションに活用

木のストローを事業化するときにクラウドファンディングを実施ました。これには資金を募るという目的だけでなく、プロモーションの一環にもなります。大阪や富山、鳥取ではクラウドファンディングでつながった団体や企業が提携先になってくださいました。各地で木のストロー製作や販売を行うことで、地域産業の活性化や雇用の創出できます。

企業や団体様のノベルティとしてだけでなく、日本トランスオーシャン航空の機内サービスにも一部採用していただいています。さらに海外からも注文がありました。フランスのプロヴァンス地方にあるワイナリーの中にあるホテル「Villa La Coste」。以前は竹製のストローを使用されていたようですが、木のストローのコンセプトに共感していただき採用にいたりました。

いままで林業や木材関係の人たちは、建築など大きな需要にしか目が行っていませんでした。ストローのように小さなものからでも需要の喚起はできると思います。提携先になっていただいたある木材会社さんでも、木のストロー販売をきっかけに自分たちで製作した家具や建材も販売しようという動きや、自社のノベルティとして使い、木材をアピールしていきたいという声も上がってきました。木のストローが、地域活性化のきっかけとなればいいなと思っています。

 
Château La Costeの敷地内にあるVilla La CosteChâteau La Costeの敷地内にあるVilla La Coste

生産体制を強化し、新しい木の商品も展開

新工場の拠点となる鳥取県智頭町の旧山形小学校新工場の拠点となる鳥取県智頭町の旧山形小学校
また、新しい製品の開発も進めています。コロナ禍の最中にヒノキ材をつかった「ヒノキのマスクケース」を開発しました。ヒノキに抗菌効果があるのは知られていますが、ヒノキの木の紙が触れたものに対しても菌を抑制する効果があることがわかり、現在、九州大学と協力してその効果を検証している最中です。人々に木を使っていただくには、建築や内装、家具以外にも様々な入口があると思います。例えばヒノキのマスクケースは健康という入口です。木に興味がない人でも健康を気にする人なら、この製品を手に取ってもらうことができます。これからも、いろいろな入口を探し、そこから需要を創出できる商品をデザイン・開発できればと考えています。すでにいくつかアイデアは出ています。

また、11月には鳥取県智頭町の旧山形小学校の施設の一区画を利用した新しい工場が稼働し始めます。地域の製造拠点として期待しています。日本各地の木材を使って木のストローや時代のニーズにあった製品をつくり、地域の企業と提携し販売を行っていくことで、日本各地の資源(人・森)を活かしていきたいと思っています。
九州大学で抗菌効果を検証中のヒノキのマスクケース九州大学で抗菌効果を検証中のヒノキのマスクケース
株式会社クレコ・ラボ 代表取締役/ディレクター 興津世禄氏
東京工業大学環境理工学創造専攻修了。株式会社三菱総合研究所、株式会社ぐるなびを経て、2006年に株式会社リサイクルワンに入社し、同社のカーボンオフセット事業の責任者として事業を立ち上げ、運営に従事。2008年に株式会社クレコ・ラボを創業し、現在に至る。

株式会社クレコ・ラボ
https://creco-lab.co.jp/

木の紙オンラインショップ
https://www.kinomeishi.com/

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