Story まちと森がいかしあう社会を目指す「キノマチウェブ」
まちと森がいかしあう社会を目指す「キノマチウェブ」 日本を代表する大手総合建設会社の一社である竹中工務店。東京タワー、日本武道館、東京ドーム、あべのハルカスをはじめ、商業施設から美術館、病院、ホテルなど多岐にわたる設計や施工実績があり、近年は、耐火集成材「燃エンウッド®」などを開発し中高層木造建築にも力を入れ、注目を集めています。その竹中工務店が発起人となってキノマチプロジェクトがスタートし、キノマチ会議の開催、キノマチウェブの立ち上げなど幅広い活動を拡げています。その想いと狙いを編集長の樫村俊也氏と副編集長のアサイアサミ氏のお二人にうかがいました。
木の建築との関りが深い竹中工務店 耐火集成材「燃エンウッド®」が最初に採用された大阪木材仲買会館
Q キノマチプロジェクトを立ち上げた狙いは何でしょう
―樫村編集長
竹中工務店は創業410年。創業からしばらくは、寺社仏閣の造営を主業としてきた歴史があります。「匠の心=棟梁精神」がDNAとして脈々と受け継がれていて、木造建築のリーディングカンパニーでありたいという強い想いがあるんです。また、いま木はたくさんあるのに活用されていないという現実があり、森林の荒廃や林業の不振は大きな社会課題となっています。
当社の木造建築に対する想いと一企業として社会課題を解決したいという願いがキノマチプロジェクトを立ち上げた一つの要因です。また、まちをつくることは、社会をつくることでもあります。それには、まちに住む人たちの声を聞き、対話していかないといけない。このプロジェクトを通じてたくさんの人々とコミュニケーションを図っていきたいという思いもありました。 キノマチプロジェクトでは森林の見学会も実施
キノマチプロジェクトから生まれたキノマチウェブ フラッツ ウッズ 木場のカフェテリア、手前のスツールの正体は燃エンウッド
Q キノマチウェブが生まれるまでの経緯を教えてください
―アサイ副編集長
去年、竹中工務店が木造建築のプロモーションのために「キノマチをつくろう~木のまちづくりハンドブック」という小冊子を制作したんです。さらに2020年に竣工した12階建ての木造建築「フラッツ ウッズ 木場」を題材に、建物ができるまでに関わった人たちを取材したストーリーブックを制作しました。その制作過程で関係していた数社の仲間から、「森林資源を活用するキノマチを通して、まちと森がいかしあう関係を実現するために、まちづくり・森づくりの当事者たちが共に学び、共に事業をつくる活動していきたいね」という声が上がり、キノマチプロジェクトが生まれました。
そして、そのプロジェクトの仲間をもっと増やすためにキノマチ会議が開催され、さらにこの取り組みをこれからも長く持続させていくためにプロジェクトを言語化するWEBサイトも必要だね!ということになり、竹中工務店が発起人となって、一般社団法人Deep Japan Lab、NPO法人グリーンズ(greenz.jp)による共同運営というかたちでキノマチウェブが誕生したんです。木をめぐる社会課題をみんなで考え行動したい想いがキノマチウェブの誕生につながったのだと思います。 先進的な木造建築技術を多用した、地上12階建て免震高層木造ハイブリッド建築「フラッツ ウッズ 木場」
根底にあるのは森林グランドサイクル®の実現 木のまちづくりが、森を生かし、木だけではなく人や経済もめぐる社会をつくります
Q キノマチプロジェクトに課せられた使命はなんでしょう?
―樫村編集長
キノマチプロジェクトの根幹は、竹中工務店が提唱する「森林グランドサイクル®」という思想にあります。従来から言われている「木を植える→育てる→収穫する→上手に使う」という「森林サイクル」の考え方をさらに一歩進め、竹中工務店が木のイノベーションを起こすことで森の産業を創出し、それによって地域産業を活性化させ、持続的な森づくりを可能にし、二酸化炭素削減や自然との共生、持続可能社会の実現をめざそうというものです。
自社だけでなく、地域経済も巻き込むことが持続的な森づくりに大切だと考えています。キノマチウェブで多彩な情報を発信しながら、この考え方に共感してくださる各方面のプレーヤーをキノマチプロジェクトに集め、その仲間を増やしていければと思います。
―アサイ副編集長
このプロジェクトは森とまちの関係者がお互いのことを知り、仲間を増やして、みんなが幸せに暮らせる未来をつくっていくのが使命です。キノマチプロジェクトの入口として、キノマチウェブの役割は大きいと思います。
木のまちづくりから未来をみつけるキノマチウェブ
知るだけでなく、次のアクションにつなげていく
Q キノマチウェブのどんなところに注目してほしいですか
―樫村編集長
初心者向けの「木にまつわる基礎知識A to Z」から、より専門的な木造・木質プロジェクト事例まで多彩な内容を雑誌のように盛り込んでいます。一つひとつよみやすく短い記事にしてありますので、雑誌のページをめくる感覚で読んでいただきたいです。最近でいちばん閲覧されたのはキノマチ特集の中の
「北海道の山を買いませんか? 山の素人でも買ってよかったと心から思える理由」 という記事です。
―アサイ副編集長
読んだ後に、そこに行ってみたい、私もやってみたい、と次のアクションを起こしていただけるようなページ作りを目指しています。情報を自分事としてとらえられるよう親近感を出し、時代の空気感を織り交ぜることを意識してしています。また仲間同士が気軽に意見交換をできるようにFacebookページも用意しています。 樫村編集長は、ずっと建築設計分野一筋に歩んできた方で、私は宝島社をスタートにエンターティメント系の雑誌編集をずっと手掛けてきました。本来なら出会うはずのない二つの個性が「キノマチ」を通じてぶつかりあう、そんなところにも注目してキノマチウェブを見ていただけたらと思います。
燃エンウッド®、CLT床材などを採用し、日本初の10階中高層木造建築物となった「PARK WOOD 高森」
森がいきる未来のまちへ 近未来に20階建ての高層木造建築の実現を目指す「アルタ・リグナ・タワー」のイメージ図
―樫村編集長
2020年10月に開催したキノマチ大会議では、多彩な専門家をお呼びして交流を図りました。そうすると、いままで木に意識が向いていなかった人に変化が現れ新しい発想や感覚が生まれてくるという手ごたえを感じました。皆さまも、このプロジェクト通じて未来のヒントを見つけ、次のアクションにつなげていただければと思います。
キノマチウェブ編集長 樫村俊也様
東京都出身。一級建築士。1983年竹中工務店に入社。東京本店設計部にて50件以上の建築プロジェクトや技術開発に関与し、2015年広報部長を経て現在は、キノマチウェブ編集長、経営企画室の専門役、木造・木質建築推進本部の専門役を兼務。
キノマチウェブ副編集長 アサイアサミ様
東京都出身。大学在学中に宝島社入社。雑誌編集者を経てタワーレコードのフリーペーパー「TOWER」の編集長に就任。2012年岡山県へ移住し、広告会社ココホレジャパンを設立。地方地域、環境問題をライフワークとする編集者