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- 香川県産ヒノキを使ったウッドフェンスからコロナ対策商品まで。技術と企画力で新しい商流を生み出す。
香川県産ヒノキを使ったウッドフェンスからコロナ対策商品まで。技術と企画力で新しい商流を生み出す。
香川県で昭和6年に木材小売店からはじまった太洋木材グループ。太洋木材株式会社では、自社のプレカット工場を囲むブロック塀を2019年に県産ヒノキ使用のウッドフェンスへリニューアルし、県産材の品質の高さをアピールしました。そこで、塀の設計施工を行った太洋木材株式会社・副会長の樋口浩良氏にウッドフェンスのお話と、系列会社の株式会社太洋木材市場で木工製品を製造販売する部署『Mokuichi』を立ち上げた樋口一真氏に、オリジナルの木工製品についてお話をうかがいました。
社屋の塀をモデルに県産ヒノキをPR
香川県高松市内で昭和23年に創業した太洋木材株式会社は、昨年、県内の木材会社6社と共同で、デザインの違うウッドフェンスを開発し、県産ヒノキの利用拡大を促進し、そのクオリティの高さを広く伝えています。自社のプレカット工場の老朽化したブロック塀33mも解体し、開発したヒノキのウッドフェンスにつくり変えました。
塀には、の県産材ヒノキを採用 。自社のプレカット工場で製材加工し、防腐・防蟻性能を持つ薬液(ACQ)を加圧注入しの耐久性を持たせています。
塀の板厚は30mm、支柱は105mm角と台風などの災害に対応する堅牢な構造となっていて、雨除けの屋根は、耐久性に優れたガルバニウム鋼板で製作 。住宅利用も想定されたデザインとなっていて消費者として好感が持てます。
ウッドフェンスの内側に隠された頑丈な構造
塀の内側は関係者以外、普段目にすることができない場所。立派なウッドフェンスを支える通称「控え(ひかえ)」と呼ばれる振れ止めも頑丈。コンクリート土台の上固定した2mの材をを2本使用し、壁をしっかりと支えています。
「塀の幅が30m以上あるとこれぐらいしないと倒れる危険性があるからね。宣伝にもなるから、より頑丈につくってますよ」と太洋木材株式会社・副会長の樋口浩良氏は笑顔で語っていました。
材料である県産ヒノキについて伺うと、「1960年代に松の代わりに植えたヒノキはようやく出荷レベルまで育ちました。雨が少ない香川のヒノキは、目が詰まっていて、強度が高いですね。外壁だけでなく、建築にも適していますので、ぜひ利用してほしいですね」と樋口氏は香川県産ヒノキの品質の高さをアピールされていました。
良質な香川県産ヒノキを使った新しい試み
グループ会社の株式会社太洋木材市場では、香川県産ヒノキを加工した『Mokuichi』と名付けた新しい商品開発とその販売に取り組んでいます。高松市の繁華街にほど近い場所にある2016年に設立された工場。場内には、専門的な木工道具や旋盤、複雑な形状の加工が可能なレーザー加工機がズラリと並んでいます。ここは「木と人をつなぐものづくり」をテーマに『Mokuichi』の様々なクリエイションが生まれる大切な場所。
設立の経緯を伺うと、「木材の良さは、手触り・香り・木目の美しさ、1点1点同じものが一つとしてない一期一会であることなど、宝探しのようなワクワク感があります。きっかけは、DIY。最初は、個人的にこっそり活動していました。あるイベントでマルシェに参加し、木でつくった千社札とコースターが喜ばれ、企業から依頼が入るようになりました。そして、2016年に満を持して社内の一部署として『Mokuichi』をスタートさせました」と取締役・室長の樋口一真氏は語っていました。
『Mokuichi』のクリエイションはここから生まれる
時代にあったものを。コロナ対策で木工製品の可能性を引き出す
改良を積み重ねた足踏み式木製噴霧器。いちばん左が岡山県のボーリング場に納品される最新作。
「コロナ対策の商品を製作できないかと思案している時に、あるドラムメーカーがペダルを使って、鉄製のアルコールスプレー用の噴霧器を製作しているシーンをテレビで観て、木でつくれないかと試作品を早速つくりました。納得できる商品が完成したのでチラシを配り、販売に踏み切りました」と樋口一真氏。噴霧器製作は苦難の連続。改良に改良を重ね、今回で4作目となる最新作は、 香川県庁に納品されています。
また、飛沫防止パーテーション「間仕木離(まじきり)」もこの機に開発された商品。
木の額縁が印象的な遮蔽板。角の45度にカットした木材同士を接合する「トメ」と呼ばれる箇所の高い精度が問われるため、大変苦労されたそう。「つくるなら、常に美しいものをつくりたいので、こだわっています」と樋口氏は、真摯な思いを語ります。最近ではフレームの木の枠を、4辺で囲わず3辺や2辺にして欲しいとのリクエストがあるそうで、既製品ではなく完全フルオーダーで製作しているそうです。
技術を受け継ぎ、未来へつなぐ。
代々受け継がれる木に対する確かな技術。樋口一真氏(写真右)に今後の展望を伺うと、「香川県の面積は18万8千ha。このうち約半分が森林です。 雨量の少ない讃岐の山の中で、じっくりと育った県産ヒノキを使って、今後も引き続きコロナ対策や時代のニーズにあった商品を企画製作して、みなさまに喜ばれるノベルティをつくり続けたい」。
「ウッドフェンスもそうですが、我々の長年培った木材の見識や知識・技術を後進にきちん伝えていきたいと思っています」と語るのは、太洋木材株式会社と株式会社太洋木材市場の副会長を兼務されている樋口浩良氏(写真左)。
香川県の老舗木材業、太洋グループの挑戦。連綿とつながる木工技術のストーリーの今後が楽しみです。