ヒノキの生産量日本一の美作(みまさか)。木の塀で地域の活性化に貢献

ヒノキ材の一大産地である岡山県の美作(みまさか)地域。この場所で、木の塀を増やすことで、木材産業や地域の活性化を志す方々がいます。木材市場にお勤めの青木善則様と、同級生であり工務店を営む株式会社影山設計工匠の影山淸信氏のお二人に、木の塀を施工したねらいと木材業界の活性化への思いを伺いました。

山には、活用されるのを待っている木々がある

市場を40年間支えてきた青山様は、地域の主幹産業を再び盛り上げたいと願い、自宅に木の塀をつくりました市場を40年間支えてきた青山様は、地域の主幹産業を再び盛り上げたいと願い、自宅に木の塀をつくりました
自宅に木の塀をつくった青木善則様は、岡山県真庭市にある勝山木材市場に勤めて40年。現在は、常務取締役として業務を統括しています。「岡山県の美作地域は、国内有数のヒノキとスギの産地。特にヒノキの生産量は日本一を誇り、『美作(みまさか)ヒノキ』と呼ばれています。市場には周辺の製材所から良材が集まり、週に一回のペースで競りが行われています」。
市場内には、大径木から製材された太い構造材、無節の良質な板材などがズラリ。明るいクリーム色にほんのりと薄桃色が差すヒノキ材たちが、所狭しと並んでいます。
しかし、県産材の需要は減少しているのが実情。木材市場が開設された昭和28年当時は、周辺に60軒以上もの製材所があったそうですが、外国産材の増加や新建材の台頭で、今では20軒ほどになってしまいました。山には、戦後植林されたヒノキ・スギが大きく育って、活用されるのを今か今かと待っている状態です。

古すぎず、適度にモダン。実用的で、景観に馴染む木の塀

自宅横の坂を上る途中に見える木の塀。擁壁の上に隙間なく張られた木の塀は抜群の存在感自宅横の坂を上る途中に見える木の塀。擁壁の上に隙間なく張られた木の塀は抜群の存在感
そんな現状の県産材業界を少しでも活性化したいと思い、自宅の庭先に県産材で木の塀をつくることにした青木様。設計・施工は、工務店経営者であり大工でもある株式会社影山設計工匠の影山淸信氏に依頼しました。
段上の土地に建つ青木様の自宅には、主庭から一段下がった平地があり、ここを木の塀で囲むことに。板と板の隙間を設けず、ぴったりと付きあわせたデザインに仕上げ、柱の頭を少し上に伸ばして三角形の笠置を設置し、個性を持たせました。設置前は段差がむき出しになっていたので、木の塀を作ったことで転落防止と外観の向上に役立っています。
「見栄えよくすることに、心を砕きました。あまり昔風になってもいけないし、かといってモダンすぎると、周囲の伝統的な和風建築とバランスが取れなくなる。いろいろ検討して、現在の形に落ち着きました」と影山氏。
使われている板は1.5cm厚の材。木の産地でつくるのだからと、美作ヒノキを贅沢に使っています。

住宅建設の経験を生かし、20年以上の耐久性を目指す

影山氏は自社の加工場兼倉庫の敷地にも木の塀を設置。幹線道路沿いにあり、木のPRにもつながっている影山氏は自社の加工場兼倉庫の敷地にも木の塀を設置。幹線道路沿いにあり、木のPRにもつながっている
影山氏は大工としての経験を生かし、長持ちさせる工夫を凝らしました。
「一番のポイントは、木材を湿気から守ること。コンクリートの基礎と土台を支える角材の間には通気パッキンを入れるとともに、さらには土台と板が接する部分には、わずかに隙間を設けています。また、板を留めるためのほぞ穴は貫通させて、水が溜まらないよう配慮しました」。
木材は、釜に入れて圧力をかけ防腐剤を中まで浸透させたうえで、保護塗料を塗布。「5年に一度程度、保護塗料を塗り重ねれば、20年以上は持つと思いますよ」と、影山氏。
青木様は、木の塀の利点をこう話します。「このあたりは木の産地でありながら、ブロック塀が主流。無機質なブロック塀と違って、ヒノキは時が経つと上品なアメ色に変わって味わい深くなるんです。年月を減るに従って味わいが出るのは人間と一緒ですね。また、軽い木は地震が起こっても安全ですから、もっと増えてほしいと思います」。

木の塀を増やして、産地の未来につなげたい

同じコンセプトで施工した他の家の塀。自然景観や木造住宅にマッチしている同じコンセプトで施工した他の家の塀。自然景観や木造住宅にマッチしている
大工歴42年、建築士歴32年、工務店を起こして12年という影山氏。青木様とは中学校時代の同級生で、立場は違っても県産木材業界をなんとか盛り上げたいという気持ちで、ともに励んできました。影山氏は住宅を建てる際も外国産材を使わず、国産材、特に県産材を使用しています。そのような家づくりを続けることで、山主へ利益を還元して山林の環境を守り、日本の伝統的な建築文化を守りたいと考えているのです。
今回の木の塀づくりも、その一環。自ら呼びかけ、さらに2軒の住宅に木の塀を施工し、自らの倉庫兼加工場の塀と門扉もヒノキ材でつくりました。 「私のつくる木の塀は、『家が崩れても塀は残る』というくらい頑丈ですよ」と影山氏。できあがった塀は、見た目はスマートですが、力を入れて揺さぶってもビクともしません。高品質かつ丁寧に作られた木の塀には、「国産材・県産材を存分に生かしたい」という影山氏と青木様の強い思いが反映されているようです。
お二人はこれからも、美作地域に似合う木の塀をさらに増やしていきたいと、笑顔で答えてくれました。
株式会社 影山設計工匠(岡山県真庭市)

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