リノベーションで古き良き日本家屋の趣ある家に

南国宮崎を拠点に建築・設計・施工・リフォームを行う西尾組代表 西尾武彦様のご自宅「無垢庵(むくあん)」。木の家の住まい心地や工夫について伺いました。

自身の年齢と同じ年数を重ねた木造平屋

昔ながらの平屋。入り口には「無垢庵」の文字が昔ながらの平屋。入り口には「無垢庵」の文字が
西尾様:
無垢庵(むくあん)の名の由来は、リノベーションする際に無垢材を使用したからです。この建物、実は取り壊される寸前だったのを買い取って、一部を改築して住み始めたものです。

ここは私の地元なので小さい頃からこの家の前をよく通っていました。ある時、住人から、「更地にして売却するから、解体費用の見積もりをしてほしい」と頼まれたのがきっかけです。この家は私と同じ昭和36年生まれです。外壁を含め建物自体は古くなっていますが、雨漏りなどはまったくなく、頑丈な作りですので、取り壊してしまうのはもったいないと思い、買い取らせていただきました。生まれ年が同じということで、親近感を感じています。

ここの奥にも古い家がありましたが、その家は取り壊されて現在は新築になっています。奥の建物に行くには無垢庵の隣の私道を通らなければいけないのですが、新築工事の際に、「ここの私道をもう少し広げたい。拡張にあたって古い塀を取り壊して新たな塀を作っても良いでしょうか」と相談されました。工事自体は反対ではなかったのですが、話を聞くとブロック塀にすると言います。
『ブロック塀ではこの家と雰囲気が合わない。ブロック塀の上に木の塀をつけるがそれで良いでしょうか』と伝えて、その通りに低いブロック塀の上に木の塀を自分で作りました。木造で、壁の漆喰が見え隠れする平家の無垢庵に真新しいブロック塀は似合わないですからね。
自身で作った木塀。ブロック塀の上に木塀を設置自身で作った木塀。ブロック塀の上に木塀を設置

免震装置、越屋根、パーゴラ……地震対策と木造の良さをミックス

屋根の上には越屋根。入り口前にはパーゴラ屋根の上には越屋根。入り口前にはパーゴラ
西尾様:
2016年に熊本地震が起こった際、行政からの依頼で被災建築物の危険度を調べる応急危険度判定業務のために被災地を訪問しました。そこで倒壊した建物を見て、改めて地震の怖さを思い知りました。
その体験をきっかけに、無垢庵には「滑り免震」と呼ばれる装置を設置しました。家をジャッキで持ち上げて基礎部分を作り替えたのです。今度のリノベーション工事で一番大きな工事になりました。
免震装置があれば、震度7の横揺れがきても倒壊の危険を防げます。また、木塀と家の間のスペースは、地震の揺れ幅を考えてのものです。免振装置のことで当社に相談に来られた方を案内する際にみてもらえるよう採用しました。

ところで、屋根の上に小さな屋根があるのがわかりますね。あれは今回、新たに作った越屋根(こしやね)です。室内に囲炉裏があるので、煙や熱を排出するために作りました。もちろん木造です。それから入り口の前には、パーゴラと呼ばれる木材で組んだ棚があります。これも自分で作りました。外の壁が漆喰だったので無垢材を貼り付けることで全体のイメージを統一しました。

外の壁に貼り付けた木材には、紫外線を受けて色が変化する自然素材の木材防護保持材を塗布しました。無垢材の色の変化を楽しみたかったので塗装するのはやめました。ところどころ、雨水がかかるところにシミができていますが、それも味わいのひとつだと思っています。
地震対策に、最新の免震装置を設置地震対策に、最新の免震装置を設置

真ん中には大きな囲炉裏。木製家具で雰囲気を統一

独特の雰囲気のある室内。古き良き日本の家屋を連想させる独特の雰囲気のある室内。古き良き日本の家屋を連想させる
西尾様:
どうぞ、中へ入ってください。木造は、夏は涼しいものの、冬は寒いと思われがちですが、この家は漆喰壁なので断熱性が高いと感じています。

家の真ん中には大きな囲炉裏があります。一酸化炭素中毒の心配はないのかと聞かれることもありますが、まったく問題ありません。
天井を見上げると、外から見えた越屋根が、屋根を抜いて作られていることがわかると思います。越屋根は煙と熱を逃すためのもの。煙は部屋には充満しないで昇っていき、越屋根の排煙窓と換気扇から出て行ってしまいます。
この囲炉裏を囲みながら、知り合いや友達を呼んで、ワイワイお酒を飲むのは楽しいですよ。

できるだけ雰囲気を統一するために家具や収納も木製のものを使用しています。使わない家具を知り合いからもらうことも多く、再利用しています。
窓の外側に使われている木製建具、は以前の持ち主の時代からずっと使用しているものです。
リノベーション前の外観。ブロック塀もかなり傷んでいるリノベーション前の外観。ブロック塀もかなり傷んでいる

素材はスギ。立派な県産材が家を支えている

木を知り尽くしている西尾様木を知り尽くしている西尾様
西尾様
家が竣工してから今年で58年ですが、ここで使われている木材はおそらく60年以上経っていると思います。使われているスギの木は油分を多く含んでいるので何十年も持ちますよ。 宮崎県は、スギの生産量が全国一。立派な木が育つ環境があるのだと思います。今日に至るまで、この家をしっかりと支えてくれているのですから。 実はまだリノベーションの最中なのですが、リノベーションして古民家のような味わいのある雰囲気をまとうことができるのは、素材が木材だからだと思います。鉄骨ではこうはいかないと思います。外観も内装も趣がありとても気に入っています。木造建築を考えているお客様には、ここをモデルハウスとしてご案内します。この建物から感じ取ってくれるものがあると嬉しいですね。
自慢の囲炉裏で入れたお茶は格別。休日にはたくさんのお客様が訪れる自慢の囲炉裏で入れたお茶は格別。休日にはたくさんのお客様が訪れる
株式会社西尾組(宮崎県宮崎市) https://nishiogumi.co.jp/

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