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外でも木を使おう シリーズ vol.3
ベランダを木で作るーーー町並みを豊かにして都市生活を豊かに
町並みを豊かにして都市生活を豊かに
古い町並み、たとえば嬬恋や中山道の町並みはとても魅力的ですよね。
歩いているとその魅力に心癒やされます。理由はいくつか考えられます。
一つは、軒が低くて町並みそのものがヒューマンスケールになじんでいて、街を歩くひとをやさしく迎えてくれるのが大きなポイントです。
もう一つのポイントは、外部に木がたくさん使われているからですね。そうした古い町並みに比べて、今の町並みはどうなっているのか?と言うと、全く木は使われていませんよね。
外部に木を使わなくなった理由
外部に木を使わなくなったのには訳があります。お隣さんとの距離が近くなって、火事の時に燃え移る心配があるため、燃えない外壁材が開発され使われるようになったこと。加えて、風通しが悪くなったために、湿気が抜けなくて木が腐りやすくなったためです。
しかし反対に言えば、お隣さんとの距離が十分に離れていれば、心配なく気を使うことができる。よく考えると、古い宿場町の街道沿いの町並みは隣同士がくっついている。でも大丈夫。そこには「うだつ」と呼ばれる火が燃え移りにくいように土と漆喰で作られた壁を設けている。これは、日本人の長い年月に培われた防災の知恵です。延焼を抑える防火壁を設けることで、お隣さんとの距離が近くでも火事については安心なのです。でも、湿気対策はそうはいかない。腐ってしまう問題は残ったままなのです。
これは、風通しをよく考えて建物を配置するなど設計の工夫で解決していくことができると思います。ですから、昔のような町並みを作ることは不可能ではない、しかし、そこには法律の高い壁があって難しいのも事実です。
ベランダを木で作ろう
それでも私は住宅街の町並みを少しでも温かく柔らかくしたいなと思います。道に面して木を一本でも植えると表情は一変します。モルタル塗りやサイディングの外壁の表情は一様で豊かな町並みからはほど遠い。外壁を木で仕上げることができれば一番です。しかし好みもあるし、隣の家がとても近くて風通しが期待できないときにはおすすめできません。
そんな時は、ベランダだけでも木で作ることができると、建物の表情がぐっと柔らかくなります。素敵な町並みに貢献して、町の価値をあげていくのも素敵な試みではないでしょうか。
ベランダにはいろいろな効果があります。ベランダの使い方で、部屋を広く見せることができます。リビングと一体にデザインした広いベランダにすれば、室内が一回り大きく延長したように使えます。
隣家が迫る都市部で、隣の家の壁が窓から見えてしまう。それを仕方のないことだと諦めている人も多いでしょう。でも、視線を遮る位の高さの目隠しを木で作ってベランダを囲えば、そこには都市の中のオアシスができあがります。
また、浴室の窓を大きく作って、その向こうに目隠しの板塀で囲まれたデッキを作ると、まるで露天風呂のような開放的でありながらプライバシーの保たれたお風呂になります。とても気持ちが良いと、お風呂タイムの楽しさが倍増したと大好評です。
木のベランダ 施工の工夫
木のベランダに、植物の緑か欲しくなってプランターをデッキに直に置いてしまうと、湿気がとどまりデッキは腐りやすくなってしまいます。その場合には、プランターをそのまま置くのではなく受け皿や台の上に置いて、足下の風通しをよくするなどの工夫は必要です。
ベランダの木材が万が一腐ってしまったときでも、あとで簡単にベランダだけ交換できるように建物本体にステンレスのブラケットを取り付けるなどの工夫をしておくことが重要です。
画像内白枠はベランダを受けるステンレス製ブラケット
耐久性を優先するなら目隠し板がおすすめ
「木のベランダはやはり長持ちしない」と悩まれている場合でも、自分の家を少しだけ変えることで、町並みに貢献するということは可能です。
例えば、ベランダは防水して作り、手すりのところの目隠し板を木で作るのです。外観のワンポイントにもなりますし、モルタル塗りやサイディングの無機質な外壁であったとしても、建物の表情が柔らかくなります。
手すりの骨組みだけはアルミで作り、目隠し板だけを後から交換できるようにしておくとさらに安心ですね。