外でも木を使おう シリーズ vol.2

外壁にだって木が使えるーーー木の色の変化を楽しむ。シルバーグレーの魅力
一級建築士
古川 泰司
アトリエフルカワ 一級建築士事務所の代表の古川です。アトリエフルカワでは、木を生かした建物の設計を行っています。

外壁に使うーーー外壁にだって木が使える

日本海に面した街道沿いに、冬の北風で砂浜の砂が屋敷内に入らないように防ぐ木の塀が並ぶ町並みがあります。できた当時は白木の塀も、時間とともにシルバーグレーに変わったその姿は美しく、これは他の素材では叶えられないものだなと思います。まさに、木材に特有の美しさでしょう。

その感動を写真に撮ってブログに上げたところ、多くの方から、「良いですね」「素敵ですね」とコメントを頂きました。そして、私の方でご自宅の設計を進めていた方からも連絡がありました。
「我が家もあのようなシルバーグレーにならないでしょうか?」
自然の風合いのシルバーグレーはとても魅力的なのです。

 
日本海側の町並みの板塀は綺麗なシルバーグレーになっていました

変化を楽しむ。木の魅力

シルバーグレーを素敵だなと思われる方は少なくないようで、市場にはシルバーグレーの塗料があるほどです。そんな時間待っていられない、そういう色を塗ったら良いという発想ですね。時間短縮です。しかし、これはあくまで人工的な色合い。自然な風合いとしてきれいなシルバーグレーになるためにはそれなりの時間が必要です。私の建主さんは、少し時間はかかっても自然に色が変わっていくのを待ちたいと言われました。

外壁は長野産の唐松を使いました。新築当時の色は唐松の黄色みが眩しいくらいに輝いていました。この唐松をシルバーグレーにするために、紫外線を当てる必要がある。そのため、UVカットの塗料は塗らず、色の変化を待ちました。

 
新築当初。数年後にはシルバーグレーになることを目指して。

待っている時間も価値がある

木には待つ時間がある、その時間さえも価値であるなと思います。たとえば、内装材ですが床に杉板を使ったお宅があります。杉は柔らかいのが特徴ですから、傷が付きやすい。しかし、その代わりに手で触れた時の優しさや暖かさは、他の木では実現できないものです。床材に杉を使いたいときは、傷が付きやすいというリスクと柔らかいという魅力を天秤にかけることになります。
3年後 シルバーグレーまであとちょっと。

床の傷は、そこで育った子どもたちの成長の印

しかし傷が付きやすいということは、悪いことばかりでありません。

「床の傷は、そこで育った子どもたちの成長の印。」

と、言ってくださった方がいました。長い時間をかけて子どもたちが育ち、その過程で傷ついた床は、たしかに子どもたちの成長を表しているのですね。

庭も外壁も変化してひとつに

月日をかけて見事なシルバーグレーに。建主さんも大満足。
完成から、1年、3年と月日がたち、今年で8年目。外壁はとても良い風合いのシルバーグレーに変わりました。久しぶりの訪問に建て主さんは、「古川さん、とても良い色になってきました」と、とても満足げな顔で話されていました。

ところで、白木の色がどうしてシルバーグレーになるのでしょうか?シルバーグレーになった木を「腐っているのではないか?」とか「カビが生えているんじゃないか?」とおっしゃる方がいますがそんなことはありません。そこにはちゃんとした理由があるのです。

木は雨にさらされると、自然とシルバーグレーの色になります。これは、紫外線で木の中の黄色の色素成分が分解され、雨で流されるため。それは自然が織りなす木の変化なのです。その風合いが自然なものであるからこそ、人の心に響くのでしょう。最近古材を使うことが流行っていますが、時間が作り上げた自然の風合いに、新品にはない魅力を感じているからでしょう。

焼き杉を使ってメンテナンスフリーの外壁に

海岸沿いの家については、外壁をどうするかは悩ましいところです。内陸部ではメンテナンスフリーをうたうガルバリュウム鋼板のサイディングが使われることが増えてきていますが、沿岸部ではやはり錆の進行が進むようで推奨されていません。昔から沿岸部に住んでいるのは漁師の方々ですが、外壁に何を使うか聞いてみたら、杉板だと言っていました。杉板は塩害に強い。考えたら当たり前ですが、目から鱗が落ちた気分でハッとしたことを覚えています。

外壁に杉板というのは、昔はみんなそうだったのです。
さらに、少しでも杉板の寿命をもたせようと、日本に古くからある対処法は墨を塗るでした。墨には防腐効果が高いことが知られています。木の看板に墨で文字が書かれていると、その文字の部分だけが、痩せず浮き上がって残っているのを見たことはありませんか?それが、防腐効果の証です。

最近では、杉の板の表面を焼き焦がした焼き杉がちょっとしたブームです。焼いた杉は表面を自然の墨コーティングされているのと同じです。耐光性に優れた外装材なのです。そして、焼き杉には当然ながら木目があって、その変えがたい表情も魅力的です。

焼き杉には表面を焦がしてそのままのものと、表面の落ちやすい墨のところをブラシで落としたものがあります。焦がしただけのものは色合いが美しいのですが、大工さんに外壁として張ってもらうときに真っ黒になってしまいますし、完成したあとも、建物に触れるたびにすすだらけになってしまう難点があります。そのため、ブラシで表面の墨を落としたものをおすすめしています。
ゆっくりとシルバーグレイに変わっていくのを待つのもよし、焼き杉の表情を楽しむのもよし。

外壁に木を使った防火構造の認定さえあります。外壁に木を使うのを十分楽しむ時が来たのです。

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