最先端設備の加工力と豊富な在庫量で幅広いニーズに応える二宮木材栃木県那須塩原市の二宮木材株式会社は、1947年(昭和22年)創業の製材会社。人工乾燥処理構造用製材のJAS認証工場になっています。扱っている木材の99%がスギで、そのうち6割から7割が栃木県産材で残りは近県材です。主に木造住宅の「梁」や「桁」などに用いられる平角材と壁や床、天井などに用いられる内装材の生産に力をいれています。また、長さ3mから6m、太さ10.5cmから15cmまでの平角材は常時豊富な在庫を持っていて、注文に即応できる体制をとっています。二宮木材本社工場にお伺いし、取締役専務の二ノ宮泰爾さんにお話をお聞きしました。 目次 強く美しい八溝杉の平角材、内装材を中心に製材原木の仕入れから製品になるまで7台の製材機がフル稼働して平角材と羽柄材を生産乾燥済み材の豊富な在庫を持ち、製品の即納体制を実現含水率、ヤング率を測定するJAS構造材の検査工程製材業者の水平連携を目指し、いずれは川上、川下とも連携を
強く美しい八溝杉の平角材、内装材を中心に製材 二宮木材の第一工場 お伺いしたのは本社のある第一工場。ここから5㎞ほど離れたところに第二工場が、さらに近郊に協力会社の工場があり、3工場合わせて年間約10万立方メートルの原木を製材しています。 樹種別に見るとスギが99%で残りの1%がヒノキ。ヒノキの製材量が少ないのは、栃木県はヒノキ生育の北限に近く、ヒノキ原木の産出が少ないからです。栃木県は、雪害や風害が少なく、適度な気温、降雨の恵まれた気象条件のため良材を多く産出します。とくに県北部の八溝(やみぞ)地域は、藩政時代から造林が行われ、先人たちが丹念に手入れをしてきたので木目が美しく、曲げに強い八溝杉の産地として有名です。 「私が入社する前はヒノキやマツも挽きましたが、今はほとんどがスギです。スギの原木は短いものから長いものまで制限を設けずにすべて受け入れているのが当社の特長の一つです」。 本社工場の広い敷地内には、山から伐り出された原木や皮剥き行程を終えた丸太、製材され乾燥済みの木材などが積み上げられ、原木を運ぶトラック、完成品の木材を出荷するトラックなどが次から次へと入ってきて活況を呈していました。 二宮木材(株)取締役専務の二ノ宮泰爾さん
原木の仕入れから製品になるまで ストックヤードにはい積みされたスギの原木 二ノ宮さんに製材工場で製品になるまでのフローを簡単に説明していただきました。「原木は、主に素材生産業者さんから調達しています。仕入れた原木は工場のストックヤードに運びます。この他に自社の中間土場も持っていて、そこで保管することもあります。弊社が求める良材は主に秋から冬に伐採するので、どうしても春夏は良材の出材が減ります。そのときのために自社の中間土場で寝かせておき、1年間を通じて安定して良材を製材できるようにしています」。 運ばれた原木は選木機にかけられた後、“リングバーガー”という機械で皮を剥かれ、次の製材工程に移ります。「“バーク”と呼ばれる剥いた樹皮の部分は、プレーナー仕上げのときに出てくる“おが粉”と混ぜてバイオマスボイラーの燃料にしています。当社の乾燥機は、すべてバイオマスボイラーの熱を利用していて、木材を無駄なく活用する循環型工場になっています。製材の工程でも“おが粉”が出てきますが、こちらは乾燥していないので畜産農家の敷料として提供しています。製材時に出る端材は、チップに加工して製紙会社に提供しています」。 リングバーガーで樹皮を剥かれた丸太
7台の製材機がフル稼働して平角材と羽柄材を生産 ツインバンドソーの製材機、一度に左右両面を製材可能 皮を剥かれた丸太はいよいよ製材機で平角材や板材に製材されます。「協力工場と合わせて7台の製材機が稼働しています。7台のうち2台が最新鋭の無人自動製材ができるノーマンツインバンドで、3台が通常のツインバンド、その他、シングルバンドが2台あります。それぞれ“令和の製材機”、“平成の製材機”、“昭和の製材機”となっています。ノーマンツインバンドは、自動的に丸太をスキャンして、最適な木取りで挽いてくれます。柱材なら1日に1,000本以上挽けます。ツインバンドだと1日に150~200本、シングル台車だと20~30本程度です。効率の悪いシングルバンドをまだ保有している理由は、ノーマンツインバンドは同じ仕様のものを大量に生産するのに向いていますが、1本ずつ仕様が違う注文に対応するにはシングルバンドの方が向いているのです」。製材された木材は、次の乾燥工程に送られます。 ツインバンド:左右に2本のバンドソー(帯鋸)を持ち、一度に丸太の両サイドを製材することが可能。 ノーマンツインバンド:製材作業を無人化し、効率よく製材することが可能。オペレーターがモニターを監視していて問題が起きた時は対応。 シングルバンド:バンドソー(帯鋸)は1本ですが、細かい調整をしながら製材可能。 最新鋭の無人製材機、ノーマンツインバンドソー写真提供:二宮木材
乾燥済み材の豊富な在庫を持ち、製品の即納体制を実現 ずらりと並んだ乾燥機 二宮木材が保有している乾燥設備は第一工場、第二工場を合わせて28台。そのうち高温乾燥機が15台で中低温乾燥機が13台です。構造材は高温、羽柄材は中温、内装材は50℃の低温、と目的に応じて使い分けています。乾燥期間は高温も中低温も1週間です。 「内装材の乾燥には昔からこだわりを持っていて、50℃以下の低温乾燥にして天然乾燥と同様の艶のある仕上がりを目指しています。また、内装材はプレーナー仕上げをした化粧面に、さらに鉋をかけて鏡面状にする“超仕上げ”を施しています」。 乾燥が済んだ木材は、プレーナーで表面をきれいに仕上げ、サイズを整え検品をしてから出荷しています。 また、乾燥済みの木材は広大なストックヤードに在庫として保管しています。「当社が大量の在庫を持つことにこだわっているのは、外国産材と同じ土俵に上がるためです。従来の国産材の構造材は、注文がきてから製材して乾燥させていました。そうすると出荷するまで1か月ぐらいかかってしまいます。一方、外国産材は乾燥済みで仕上がった製品がそこいら中にあるわけです。だから在庫を豊富に持ち、注文があったらすぐ対応できるようにしています。いちばん在庫を持っているのが平角と呼ばれる横架材です。平角の在庫量は材積で3,000立方ぐらいあります。 なぜ、平角の在庫が多いかというと、梁の国産材の自給率が異常に低いからです。在庫を豊富に持つことで国産材の横架材を少しでも使ってもらいたいと思っています。在庫を持つようにしてから10年ほど経ちますが、一昨年から上場企業さんが当社の梁を使ってくれるようになりました。やっと国産材の横架材も注文すればすぐ手に入ることが認知されてきたのだと思います」。 乾燥機の中に1週間置かれ含水率を下げます
含水率、ヤング率を測定するJAS構造材の検査工程 JAS構造材、E70はヤング率70、SD15は含水率15%を示します 一般の木材とJAS構造材は、製材、乾燥、プレーナーをかけるまで工程はほぼ同じです。JAS構造材は、プレーナーで仕上げたあとグレーディングマシンにかけられ、マイクロ波で含水率を測定し、ハンマーによる打撃でヤング率を測定します。弊社の場合、含水率20%以下、ヤング率70以上の基準に満たないものは、ここで除外します。検査に合格したものは特殊なインクジェットプリンターで社名、樹種、含水率、ヤング率、寸法等が印字され、最後に人による検品があり、隠れていた傷や割れなどを見つけた場合は除外します。 二宮さんにJAS構造材の良さについてお聞きしました。 「1本、1本ちゃんと検査して、強度等を数値で表示しているので、施主様に安心感を与えることができると思います。一般の人にこれは素性のいい木材です、と言ってもわかりませんからね。それと、木造戸建て住宅を建築する場合、建築確認手続きが必要と法律に定められていますが、その手続きが見直され、2025年4月から木造2階建てや延べ面積が200㎡を超える木造平屋建ても、今までは手続きが不要だった“構造関係規定等の図書”が必要になります。JAS構造材は国によって基準強度がきちんと定められているので、構造計算がしやすく安心です。JAS構造材以外の木材(無等級材)も基準強度は定められていますが、とても低い値なので構造計算上不利になると思います」。 打撃式ヤング率測定装置 マイクロ波による含水率の測定
製材業者の水平連携を目指し、いずれは川上、川下とも連携を 横架材ストックヤードに保管されている乾燥済みの平角材 二ノ宮さんに今後の抱負をお伺いしました。 「2024年の目標として、製材業者の水平連携を考えています。同じ製材業者でも分野によって得意不得意があります。それを補う形で連携して、1社では不可能なことも5社、6社と集まり、チームとなることで実現できます。例えば、当社はスギが中心でヒノキの製材はほとんどやっていません。だからヒノキの製材を中心にやっている会社と組めば、スギでもヒノキでもお客様の要望にチームとして応えることができます。そうすればお客様に満足していただき、信用も生まれます。今、すでにヒノキ製材専門の会社、柱製材専門の会社、不燃木材の会社など何社かと話し合いをはじめています。まずは、全部さらけだして、お互いが信用しあえるような関係になる必要があります。 もっと言うと、川中の製材業者だけでなく、川上の林業会社との連携や川下の工務店や建設会社とも立体的に連携していければいいと思っています。そうすれば川下の木材需要量を予測して、川上に毎月必要な原木量を伝えることができ、お互いに仕事がやりやすくなります。事業を持続させるには、誰かだけが儲かるのではなく、みんなが儲かる“三方よし”の関係をつくることが重要だと思っています」。 国産材の利活用促進のため様々な取り組みにチャレンジしている二宮木材さんの今後がとても楽しみです。 二宮木材の製材工程
Story 古くて新しい?国産木材をふんだんに活用できるCLTログハウス構法で建てた「上滝(かみだき)こどものもり」 外構・外装木質化による新たな木材利用の可能性 地場産スギ材でつなぐ、家族の思いと地域林業の未来 長野県産スギ材で建てた、住み心地のいい木造住宅 おすすめ記事 はじめてのウッドフェンス&ウッドデッキのメンテナンス 木を使うことで、日本の自然と社会が豊かになる。子供たちへのメッセージ カテゴリー SDGs エクステリア 木の家 木の街づくり タグ ウッドデッキ ウッドフェンス オフィスビル グランピング 開発秘話 学校・保育園 古民家 公園 公共スペース 雑誌掲載 対談 木の家具 木の雑貨 木の中高層建築物 木造住宅 遊具 JAS構造材 エリア 全国 北海道・東北地方 関東地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 九州地方