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生け垣からウッドフェンスへ。ウッドタウンならではの悩みを解消!
宮崎県の南東部にある県庁所在地、宮崎市。市の中央部にある生目台は、平成3年に新住宅市街地開発事業により開発されたウッドタウン地区。木に育まれたうるおいのある低層住宅地として整備が図られました。この地区は塀ではなく生け垣を採用しており、住民は長きに渡って虫の被害に悩まされていたそうです。昨年10月に生け垣をウッドフェンスにリニューアルした施主の森山様と施工会社の株式会社西尾組・代表取締役西尾武彦氏にお話を伺いました。
長年の悩みを解消した天然木のウッドフェンス
住宅地に一際目立つナチュラルな木の風合いが印象的なウッドフェンス。家主の森山様は現在の木塀にする前、生け垣に集まる害虫に頭を悩ましていました。今回、生け垣から木塀に変更した経緯を伺いました。
「以前からウッドタウンの規定のため、生け垣を設けていました。緑豊かな街並みが気に入って住んでいますが、生け垣を手入れしていると虫に刺される事が多く、それをストレスに感じていました。私自身も高齢になってきましたので、将来において年数回の剪定や殺虫剤散布の作業を行うことは難しいと考え、家のメンテナンスでお世話になっていた建築会社の西尾さんに相談しました。その後、ウッドタウンの規定に抵触しない方法を提案され、木製の塀に作り変えようと思いました」
積年の悩みの解消と木のまちづくり(ウッドタウン)を強調すべく、森山様はウッドフェンスの設置を決断したそうです。
施主の希望を叶えた有機的なデザイン
宮崎市の宮崎神宮のすぐ近くに居を構える株式会社西尾組。古くは大正10年より大工として建築に携わり、昨年で創業100年を迎えた老舗建築会社です。現在4代目となる代表取締役西尾武彦氏に、今回のウッドフェンス・ウッドデッキ工事について伺いました。
「県産材・飫肥杉(おびすぎ)は、一般の木材より油分を多く含み、腐りにくい特徴があります。耐久性も優れていて、昔から船の弁甲材に使われていて建築の構造材にも適しています。木製のフェンスとデッキにぜひ使いたいと思いました。今回使用した材は、十分乾燥させた飫肥杉に防腐・防蟻処理剤を加圧注入し、JAS性能区分のK4担当にしています。乾式加圧注入は、木の色味が変わらず、自然な木の色が出ます。」
籐を編んだ椅子のようなデザインの木塀。この立体的なデザインに加え、板を曲げるという作業は大変だったのではないでしょうか?
「これは施主の森山様のアイデアです。施工時に板を曲げて止めるため、試行錯誤を重ねて割れないギリギリの厚み12mmにしました。これ以上薄くすると加圧注入する際に割れてしまいます。設計段階では柱間に木を2本入れる予定でしたが、加圧注入した板は硬く曲がらないため、1本に変更させて頂きました」と西尾氏は施工の難しさを語られていました。
ライトアップにより木塀の陰影が美しい夜間景観を創出している。
光溢れる開放的なウッドデッキに隠された職人のアイデア
日当たりの良い庭にできた広々としたウッドデッキ。こちらは、通常のウッドデッキと少し印象が異なります。その制作意図を西尾氏に伺いました。
「既設のウッドデッキが痛んで来ていたため、フェンス工事に合わせてデッキも改修しました。45x90mmの板材を通常は平使い※にしますが、今回はあえて縦使いにしました。そのため、板厚90mmの丈夫でしっかりとしたデッキが完成しました。デザイン的にもシャープな印象になり、珍しいつくりとなりました。板の枚数が多くなるため、その分隙間が増えて風通しも良くなり、デッキ下の空間が湿気る心配もありません」
※平使い:長方形の材の長い方を上に使うこと。短い方を使う場合は縦使いという。
通常より作業工数が掛かるデザイン。既存のデザインを覆すアイデアに加え、お客様に喜んで欲しいとの一念で苦労を買って出る姿に西尾氏の職人としての心意気を感じました。
縁側の小さなウッドデッキは庭仕事の休憩場所として活用
地元の木を使った無垢材のウッドフェンスでウッドタウンの景観をアップロード!
古くなった既設の生け垣から新しくウッドフェンスに変貌を遂げた森山邸。森山様に感想を伺うと、「素敵なフェンスとデッキをつくって頂き、大変感謝しています。生け垣は厚さが70cmもあったのですが、ウッドフェンスにすることで庭が広く使えるようになり、生け垣に集まってくる虫も減りました。木の温もりを感じられる空間はとても気に入っています。今後はウッドタウンの雰囲気に合う庭づくり、景観づくりを考えてます」。
設計施工を担当し、現場での陣頭指揮を執った西尾氏は、「この木材は20年は持つ言われていますが、30年は持つのではないでしょうか?保護剤を塗るのも良いですが、後々塗料が剥げてくると古ぼけた印象になりますので、なるべくならこのままの状態で経年変化を楽しんで頂きたいと思っています」と今後の維持管理について語られました。
悩みの種だった生け垣から斬新なデザインのウッドフェンスへ。この木塀は近所でも評判を呼び、周辺住宅もウッドフェンスしたいと問い合わせが増えているそうです。塀を変えることでウッドタウンの景観と生活も変わりつつあります。