スギ材の特徴とは?住宅建築材はじめ多彩な用途や注意点をご紹介
日本の住宅建築において、もっとも身近な木材のひとつであるスギ材。誰でも聞いたことがあるスギですが、じつはその特徴についてよくわからない方も多いのではないでしょうか。
住宅を建てる際には、木材の特徴を理解することで、適材適所の使い方が可能になります。ここでは、スギ材の基本的な特徴から、他の樹種との違いや用途、注意点までわかりやすく紹介します。
住宅を建てる際には、木材の特徴を理解することで、適材適所の使い方が可能になります。ここでは、スギ材の基本的な特徴から、他の樹種との違いや用途、注意点までわかりやすく紹介します。

スギ(杉)材の特徴とは?
スギ材を建築材料として適切に活用するためには、まずは基本的な特徴を理解することが大切です。さっそく見ていきましょう。
ヒノキ科スギ属に分類され、日本の気候風土にもっとも適応した樹種として、全国で植栽されていますが、北海道では道南地域、沖縄県では本島北部地域に分布しています。樹高は50メートルに達することもあり、樹齢1,000年を超える巨木も各地にあるほどです。地域によっては「秋田杉」「吉野杉」「屋久杉」など、ブランド化された優良材も生産されています。
日本固有である特性が、古来の建築材として重宝されてきた理由のひとつです。
これらが近年ようやく本格的な利用期となり、国は花粉症対策もかねてスギ材の需要を現在の1,240万m³から10年後には1,710万m³までにすることをめざしています。この豊富な資源量により、国産材のなかでもスギは安定供給が可能な木材として期待されているのです。
この性質により、長尺の構造材を効率的に製材できるため、建築用材としても理想的な樹種となっています。
平均的な年輪幅は3〜5mmですが、これよりも広くなりすぎると強度が下がります。植林する木の間隔が広すぎると成長が速くなりすぎて年輪幅が広がるため、適切な本数での植林と、成長段階に応じた間伐による密度管理と、大径となったスギからどんどん使っていくことが重要です。
これは、おおよその値となりますが、同じ針葉樹のヒノキ(0.44)やアカマツ(0.52)、さらに広葉樹のナラ(0.68)と比べてもかなり軽いことがわかります。このため、大工さんが運んだり加工したりしやすいのです。また、スギは針葉樹のなかでは柔らかいため、木工初心者にも扱いやすい特性があります。
調湿性能にもすぐれており、湿度が高いときには湿気を吸収し、低いときには放出することで、室内環境を快適に保ちます。この特性により、結露やカビの発生を抑制し、快適な室内環境の維持に役立ちます。
スギは日本固有の樹木 学名はCryptomeria japonica
スギは日本固有の常緑針葉樹で、学名は「Cryptomeria japonica(クリプトメリア・ヤポニカ)」、その意味は「日本の隠れた財産」です。ヒノキ科スギ属に分類され、日本の気候風土にもっとも適応した樹種として、全国で植栽されていますが、北海道では道南地域、沖縄県では本島北部地域に分布しています。樹高は50メートルに達することもあり、樹齢1,000年を超える巨木も各地にあるほどです。地域によっては「秋田杉」「吉野杉」「屋久杉」など、ブランド化された優良材も生産されています。
日本固有である特性が、古来の建築材として重宝されてきた理由のひとつです。
スギは日本で一番植林面積が多い
林野庁の統計によると、日本の人工林面積約1,009万ヘクタールのうち、スギの植林面積は約441万ヘクタールと全体の44%を占めており第1位です。これは戦後の拡大造林政策により、成長が早く建築用材としての利用価値が高いスギが積極的に植林されたことによります。これらが近年ようやく本格的な利用期となり、国は花粉症対策もかねてスギ材の需要を現在の1,240万m³から10年後には1,710万m³までにすることをめざしています。この豊富な資源量により、国産材のなかでもスギは安定供給が可能な木材として期待されているのです。
スギはまっすぐのびる
スギの名前の由来は「直ぐ木(すぐき)」から転じた説が有力で、その名の通り、幹がまっすぐに成長するのが特徴です。この性質により、長尺の構造材を効率的に製材できるため、建築用材としても理想的な樹種となっています。
スギは成長が速い
成長が速いのもスギの特徴です。植林から40〜80年で建築用材として利用できるサイズとなります。成長が速いため密度が低く、軽量で加工しやすい材質です。平均的な年輪幅は3〜5mmですが、これよりも広くなりすぎると強度が下がります。植林する木の間隔が広すぎると成長が速くなりすぎて年輪幅が広がるため、適切な本数での植林と、成長段階に応じた間伐による密度管理と、大径となったスギからどんどん使っていくことが重要です。
スギ材の物理的な特性
ここでは、スギ材の物理的な特性をあげます。軽量で柔らかい
スギは日本の木材の中でもとくに軽い木です。乾燥させたスギ材の密度は約0.38g/cm³で、水の約4割しかありません。これは、おおよその値となりますが、同じ針葉樹のヒノキ(0.44)やアカマツ(0.52)、さらに広葉樹のナラ(0.68)と比べてもかなり軽いことがわかります。このため、大工さんが運んだり加工したりしやすいのです。また、スギは針葉樹のなかでは柔らかいため、木工初心者にも扱いやすい特性があります。
加工がしやすい
スギ材はまっすぐな木目と適度な柔らかさにより、のこぎりでの切断、カンナでの表面加工、釘打ちなど、あらゆる加工が容易にできます。とくに釘を打ってもしっかり固定され、割れも発生しにくいため、建築現場での作業がしやすい木材です。また、接着剤との相性もよく、集成材や合板の原料としても広く利用されています。断熱性・調湿性がある
スギ材の熱伝導率は0.087W/mKと低く、すぐれた断熱性能をもっています。コンクリートの1.637W/mKと比較するととても高い断熱性です。そのため冬の表面温度は密度の高い広葉樹に比べ数度も高くなります。調湿性能にもすぐれており、湿度が高いときには湿気を吸収し、低いときには放出することで、室内環境を快適に保ちます。この特性により、結露やカビの発生を抑制し、快適な室内環境の維持に役立ちます。

スギ材と他の樹種との違い
建築材を選ぶ際には、各樹種の特性を比較検討することが重要です。ここでは、スギ材と他のおもな建築用木材との違いについて比較します。
一方、スギは軽量で加工性にすぐれ、柱や梁などの構造材、内装材として幅広く使用されます。価格面では、スギ材の方が一般的に20%程度安価で、平均的な1m³あたりの価格はスギが7.6万円、ヒノキが9.5万円程度です(2025年8月現在。木材市売市場等での価格)。
香りの特徴も異なり、スギは甘く穏やかな香り、ヒノキは清涼感のある独特の香りをもっています。スギとヒノキの違いについては、以下の記事でくわしくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:スギとヒノキの違いとは?木造住宅における日本の2大人気樹種を徹底比較
ホワイトウッドは北欧産の輸入材で、価格的にはスギ材と同等かやや高めです。耐久性と耐蟻性でスギ材に劣る傾向です。とくに日本の高温多湿な環境では、防腐・防蟻処理をしないでの使用はおすすめできません。スギ材は国産材として日本の気候に適しており、輸送コストやCO2排出量の観点からも環境にやさしいといえます。
スギとヒノキはどう違う?
スギとヒノキは日本の代表的な建築用材ですが、その特性には明確な違いがあります。物理的な性質では、ヒノキの方が比重や硬度が高く強度にすぐれているため、土台や水回りなど耐久性が求められる部位に最適です。一方、スギは軽量で加工性にすぐれ、柱や梁などの構造材、内装材として幅広く使用されます。価格面では、スギ材の方が一般的に20%程度安価で、平均的な1m³あたりの価格はスギが7.6万円、ヒノキが9.5万円程度です(2025年8月現在。木材市売市場等での価格)。
香りの特徴も異なり、スギは甘く穏やかな香り、ヒノキは清涼感のある独特の香りをもっています。スギとヒノキの違いについては、以下の記事でくわしくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:スギとヒノキの違いとは?木造住宅における日本の2大人気樹種を徹底比較
スギと輸入材(ベイマツ・ホワイトウッド)の違いは?
スギと輸入材を比較する際は、強度と価格のバランスが重要なポイントです。ベイマツ(米松)はスギよりも曲げ強度が高く、重量物を支える梁材としてすぐれています。ただし、価格はスギ材より高めです。調湿性能ではスギ材の方がすぐれているとされています。ホワイトウッドは北欧産の輸入材で、価格的にはスギ材と同等かやや高めです。耐久性と耐蟻性でスギ材に劣る傾向です。とくに日本の高温多湿な環境では、防腐・防蟻処理をしないでの使用はおすすめできません。スギ材は国産材として日本の気候に適しており、輸送コストやCO2排出量の観点からも環境にやさしいといえます。

スギ(杉) 木材としての多彩な用途
スギ材は建築材料としてだけでなく、私たちの生活のさまざまな場面で活用されています。構造材から日用品まで、スギ材の特性をいかした多様な用途について紹介しましょう。
また近年では、スギを使った集成材も増えています。複数の板を接着して作る集成材は、大きなサイズの部材も作れるので、体育館や公共施設などの大型木造建築にも使われています。
関連記事:木の街づくりを支えるJAS構造材
スギ材の美しい木目と温かみのある色調は、内装材としても人気があります。床材や壁材、天井材として使用され、とくに和室の造作材としては欠かせない存在です。
芯材の赤身と辺材の白太とのコントラストをいかした「源平」と呼ばれる意匠や、赤身や柾目の多い落ち着いた上品な意匠、節の有無による等級分けなど、好みのデザインから選べます。
表面仕上げも、用途や好みに応じて選択が可能です。
• プレーナー仕上げ:つるつるした仕上がり
• サンダー仕上げ:さらさらした仕上がり
• 浮造り仕上げ:ごつごつした仕上がり など
焼杉という伝統的な技法で表面を炭化させることで、耐久性と意匠性を高めた外壁材も人気です。また、長期間利用するためには防蟻・防腐処理を行った材料を使用する事や、定期的なメンテナンスが重要です。
参考:スギを使ったエクステリアの施工事例
スギの香り成分が日本酒に移ることで、独特の風味「樽酒」が生まれます。とくに吉野杉の樽などは高級酒樽として珍重されてきました。
このように住宅建材から身近な製品まで、スギは余すところなく活用されているのです。
構造材としてのスギ
スギ材は、住宅の柱や梁などの主要な骨組みとして広く使用されています。JAS規格では、機械によって測定された強度に応じて、E50〜E150の等級が設定されており、建物の用途や必要な強度にあわせて適切な材料を選ぶことが可能です。また近年では、スギを使った集成材も増えています。複数の板を接着して作る集成材は、大きなサイズの部材も作れるので、体育館や公共施設などの大型木造建築にも使われています。
関連記事:木の街づくりを支えるJAS構造材
内装材や造作材としてのスギ

スギ材の美しい木目と温かみのある色調は、内装材としても人気があります。床材や壁材、天井材として使用され、とくに和室の造作材としては欠かせない存在です。
芯材の赤身と辺材の白太とのコントラストをいかした「源平」と呼ばれる意匠や、赤身や柾目の多い落ち着いた上品な意匠、節の有無による等級分けなど、好みのデザインから選べます。
表面仕上げも、用途や好みに応じて選択が可能です。
• プレーナー仕上げ:つるつるした仕上がり
• サンダー仕上げ:さらさらした仕上がり
• 浮造り仕上げ:ごつごつした仕上がり など
外構材としてのスギ
適切な防腐処理を施したスギ材は、ウッドデッキやフェンス、外壁材としても使用が可能です。とくに赤身部分は辺材の白太と違い養分がほとんどないことと、天然の抽出成分により、ある程度の耐久性を持っています。焼杉という伝統的な技法で表面を炭化させることで、耐久性と意匠性を高めた外壁材も人気です。また、長期間利用するためには防蟻・防腐処理を行った材料を使用する事や、定期的なメンテナンスが重要です。
参考:スギを使ったエクステリアの施工事例
家具や建具
スギ材の軽さと加工性のよさは、家具や建具の製作にも適しています。タンスや本棚、テーブルなどの家具類、障子や襖などの建具類に広く使用されるほどです。とくに、調湿性能をいかした衣類収納家具は、防虫・防カビ効果も期待できます。日本酒の酒樽
住宅建材以外にも、スギ材は多彩な使われ方をしています。スギ材は古くから日本酒の酒樽として使用されてきました。スギの香り成分が日本酒に移ることで、独特の風味「樽酒」が生まれます。とくに吉野杉の樽などは高級酒樽として珍重されてきました。
割り箸
スギの端材は、割り箸の原料として有効活用されています。スギの割り箸は軽くて割りやすく、口当たりもよいことから、高級な割り箸として位置づけられているものです。おがくず
スギ材を加工する際に出るおがくずも、さまざまな用途で有効活用されています。ペット用の猫砂や、燻製を作るときのスモークチップとして使われるほか、消臭剤や芳香剤にも利用されているのです。スギの香り成分をいかした製品は、日用品としても人気があります。このように住宅建材から身近な製品まで、スギは余すところなく活用されているのです。

住宅建材としてのスギ材 メリットとデメリット
住宅建材としてのスギ材がもつメリットは、たくさんあります。まずは、手ごろな価格で安定的に供給される点です。さらに柔らかくて加工がしやすく、すぐれた断熱性能により省エネ住宅の実現にも役立ちます。また調湿機能による快適性や、国産材のため輸送距離が短く環境にやさしい点も魅力です。
一方で、柔らかい材質のため傷がつきやすかったり、辺材部分の白太は耐水性や耐久性が低い点には注意が必要です。心材と辺材で性能差があるため使用部位の選別が重要で、節の多い材は構造材として使用する際に等級確認が求められます。
国産のスギ材で住宅を建てるメリットについては、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:「国産のスギ材で住宅を建てるメリット9選|杉の疑問にお答えします」
ここからは、スギ材を扱う際に注意すべき点を紹介します。
未乾燥材を使用すると、収縮による割れや反り、接合部の緩みなどの不具合が発生します。人工乾燥(KD材)では、温度と湿度を管理しながら短期間で均一な乾燥が可能です。
一方、天然乾燥では時間はかかりますが、木材の脂分による色つやがよく、香りも残りやすいという特徴があります。
心材部分は天然の抽出成分によって比較的耐久性がありますが、辺材部分は水分や栄養分を多く含むため腐朽やシロアリの被害を受けやすく処理が必要です。
内装材として使用する場合は、節の穴の補修などを適切に行わなければなりません。割れや反りの防止には、ゆっくりとした乾燥管理と反り止め加工、切断面の適切な処理が効果的です。
一方で、柔らかい材質のため傷がつきやすかったり、辺材部分の白太は耐水性や耐久性が低い点には注意が必要です。心材と辺材で性能差があるため使用部位の選別が重要で、節の多い材は構造材として使用する際に等級確認が求められます。
国産のスギ材で住宅を建てるメリットについては、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:「国産のスギ材で住宅を建てるメリット9選|杉の疑問にお答えします」
スギ材を扱うときの注意点
ここからは、スギ材を扱う際に注意すべき点を紹介します。
適切な乾燥処理が必要
スギ材を建築材として使用する際は、適切に乾燥させることが重要です。木材に含まれる水分の量を%で表した数値を含水率といい、JAS規格では用途別に15%以下、25%以下などの基準が設けられています。とくに日本の気候では、構造材は15%以下であることが重要です。未乾燥材を使用すると、収縮による割れや反り、接合部の緩みなどの不具合が発生します。人工乾燥(KD材)では、温度と湿度を管理しながら短期間で均一な乾燥が可能です。
一方、天然乾燥では時間はかかりますが、木材の脂分による色つやがよく、香りも残りやすいという特徴があります。
防腐・防蟻処理の必要性
土台や外部に露出する部材には、赤身材の使用や、加圧注入による防腐・防蟻処理がかかせません。処理には国の安全基準に適合した薬剤を使用します。心材部分は天然の抽出成分によって比較的耐久性がありますが、辺材部分は水分や栄養分を多く含むため腐朽やシロアリの被害を受けやすく処理が必要です。
施工上の留意点
節の扱いについて、構造材では節の大きさと位置を確認し、柱と梁の接合部など負担の大きい箇所は避けて配置します。内装材として使用する場合は、節の穴の補修などを適切に行わなければなりません。割れや反りの防止には、ゆっくりとした乾燥管理と反り止め加工、切断面の適切な処理が効果的です。

スギ材の特徴をいかして日本の風土に合った快適な住まいづくりを
スギ材は、日本の気候風土に適した建築材料だからこそ先人も多く植林したといえます。特徴を正しく理解し、適材適所に使用することで、快適で長持ちする住まいを実現できます。
軽量で加工しやすく、すぐれた断熱性と調湿性をもつスギ材は、日本の高温多湿な環境に最適な建材といえるでしょう。デメリットとされる柔らかさや耐久性の課題も、適切な処理と施工により十分にカバーできます。
豊富な国内資源を活用し、地域経済の活性化と環境保全にも貢献するスギ材。日本の伝統的な木造建築技術と最新の木材加工技術を組み合わせることで、スギ材の可能性はさらに広がっています。
これからの住まいづくりにおいて、スギ材の特徴を最大限にいかした家づくりを検討してみてはいかがですか。
参考:林野庁「林産物に関するマンスリーレポート モクレポNo.49」令和7年10月号
軽量で加工しやすく、すぐれた断熱性と調湿性をもつスギ材は、日本の高温多湿な環境に最適な建材といえるでしょう。デメリットとされる柔らかさや耐久性の課題も、適切な処理と施工により十分にカバーできます。
豊富な国内資源を活用し、地域経済の活性化と環境保全にも貢献するスギ材。日本の伝統的な木造建築技術と最新の木材加工技術を組み合わせることで、スギ材の可能性はさらに広がっています。
これからの住まいづくりにおいて、スギ材の特徴を最大限にいかした家づくりを検討してみてはいかがですか。
参考:林野庁「林産物に関するマンスリーレポート モクレポNo.49」令和7年10月号






